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 Movie Review 2005年7月7日(Thu.)

宇宙戦争

 地球最期の日――人類は試される、その愛と勇気を。ババーン!

 原作は古典中の古典SF、その映画化『宇宙戦争』(1955年/ジョージ・パル製作)も名作、オチも一般常識になってる有名なお話、(私にとっては)つまらない映画づくりの第一人者スピルバーグが映画化とくれば面白くなるはずもなく、見どころはトム・クルーズとダコタ・ファニングの共演のみか…と思いきや、めーちゃくちゃ面白い! と思わず一人ごちた出色の出来、スピルバーグ監督作品では『激突!』以来のバチグンの面白さでございます。

 たとえばヒッチコック『鳥』も、主人公一人の視点にほぼ絞られてましたが、スケールの大きい話は視点を絞った方が面白くなる好例、世界の名所旧跡を破壊したい気持ちをグッと抑えてトム・クルーズ個人の視点に絞りきったスピルバーグ、よくやった! 感動した! と申し上げたい。

 おおむね原作に忠実…かどうかは原作読んでないのでわかりません。ジョージ・パル版と大筋は同じ、って大昔に見たきりなのでよくわかりません。が、誰でも知ってる話に、オリジナルと思われる別の話をうまいことからめた脚本がお見事(『アパートメント・ゼロ』『スパイダーマン』のデビッド・コープ)、すなわち駄目父トム・クルーズが、「娘と息子を守らないと、面目丸つぶれ!」と奮起、父親として男としてガッツリ成長する物語が語られるのであった。って、あまり成長したようにも見えないところがよいです。トム・クルーズ最高!

 トム・クルーズが旅するオデッセイ形式、ありとあらゆる災害に巻きこまれる地獄巡り、9.11同時多発テロ、アフガン・イラク侵略、阪神大震災、広島・長崎など、さまざまな天災・人災のイメージが続々参照され、トム・クルーズがとある二者択一を迫られるのは『ソフィーの選択』を思い出したりしてホロコーストも想起され、禍々しさ・不条理さただよう映像のつるべうち、気色よろしいです。

 ドカーン! と異星人のロボットが出現、ズガーン! とキリスト教会の尖塔が倒され、アメリカ人どもがあわてふためきほうほうの体、逃げまどうのが痛快無比! ではなくて、「同時多発テロ・超拡大版」の様相を呈し、ヒューマニズムが入り込む余地なく、「アメリカン・ウェイを発揮して団結、みんなで宇宙人をやっつけよう!」みたいなぬるい展開とも無縁、自分と自分の娘を守るだけでいっぱいいっぱいなのもリアルですね。

 オープニングとラストに、とってつけたような男性ナレーションが挿入され、「お前、誰やねん!」とつっこんだところ、モーガン・フリーマンでした。それはさておきラス・メイヤー作品ばりの「とってつけた感」が漂い、スピルバーグは、ヒッチコック『鳥』のような「終末感・無力感・絶望感」漂うラストにしたかったに違いない…と愚考しますが、『未知との遭遇』『E.T.』で「未知なるもの」はお友達として描かれたのが一転、「未知なるもの」はやっぱり怖い! ものすごく怖い! このスピルバーグの心境の変化は、やはり9.11同時多発テロの影響か…。

 そんなつまらない分析はどうでもよくて、例によってダコタ・ファニング、『ハイド・アンド・シーク』でも脅えて逃げる最高の演技を見せましたが、今回も凄い! 世界最高のリアクションでございます。

 色々書いてまいりましたが、もうひとつふたつ、この映画が伝えるすぐれたメッセージはまず、宇宙人が攻めてきたときは「自転車が最高!」ということ。クルマが動かない中、すいすい走る自転車の姿に私は茫然と感動しました。サイクリストはさっさと逃げおおせたので、ほとんど画面に登場しないのが残念でした。

 もうひとつは「大阪人最強!」ということです。このへんは、『宇宙戦争2』でこってり描かれるはず、楽しみでございます。知らん。

 特撮はILM、ところどころCG臭くてゲンナリ、宇宙人のデザインも古典的で少々ガッカリ、ですが特撮の大盤振る舞い、スピルバーグ映画はこうじゃなくっちゃ! と一人ごちました。

 京都市内だけで10スクリーン以上? の拡大ロードショーは、拡大にもほどがある! と思いますけど、スピルバーグ最高傑作、バチグンのオススメでございます。

☆☆☆★★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2005-Jul-7;