世界でいちばんパパが好き!
すべての女の子の最初の恋人はパパです――。ババーン! 公式サイトなどでは、大変重要な、…それはあかんのとちゃうの? みたいなネタが、惜しげもなくバラされてますのでご注意ください。
原題は『jersey girl』、ニュージャージーの労働者階級出身ベン・アフレック、花のニューヨークで[PRマン]として大成功、調子こいてジェニファー・ロペスと結婚するも、以下ネタバレですが、ジェイ・ローは娘出産と同時にお亡くなりになり、ベン・アフレックは赤ん坊をニュージャージー実家の父親にあずけて仕事ざんまい、ところがついに大失敗! …という愉快・痛快な発端。
ベンはニュージャージーで父の仕事を手伝いながらも、なんとかNYでPR稼業に返り咲きたい、でも家族も大事だしー、と色々葛藤する、というお話。
監督はケヴィン・スミス、私、『ドグマ』くらいしか見たことないのですけど、『ドグマ』は才気走ったギャグ映画、一転してハートウォーミングな父娘物語、お話はありがちなんですが、ディテイルにケヴィン・スミスらしい(よく知りませんけど)毒があって、絶妙のスパイスになっとります。
たとえば、やもめのアフレックさん、子育てに忙しく長年デートしておらず、ついレンタルヴィデオのお世話になりますが、レンタルヴィデオ店員がなんとリヴ・タイラー! 店員さんが美女では、やらしいヴィデオを借りるのはいかにも恥ずかしかろう…、しかし彼女はメガネのガリ勉キャラで、「『独身男性の性行動』を研究するレポートの試料にするから、インタビューさせてくれない?」と追い打ちをかける…と、スクリューボール・コメディ風の、常識はずれなキャラがグー、リヴ・タイラーのガリ勉演技もキュートです。
お互い恋仲になったはよいけれども、彼女はベン・アフレックのアホさ加減に傷つき、さめざめと泣くシーンがありまして、ヴィデオ屋アダルトコーナーに隠れて泣く…みたいな、悲しいけれども笑えるところが実によろしく、私もつい泣きながら笑ってしまいました。
脚本がよくできておりまして、娘が近所のガキを連れ込んで、秘所を見せあいっこするのを目撃したベン、「そういうことは、結婚を約束した相手とだけするもんだ」と叱るのが伏線となって…とか、「ニュージャージーはニューヨークとは違うぞ、水道工事で道路を封鎖しようもんなら、住民が怒り狂う」、で実際、住民が怒り狂い、公聴会でベンが熱弁をふるい住民を説得したのが仇となって…とか、このへんは、東洋的な[因果応報]ではない、西洋的な[ただただ人に試練を与え続ける神]思想が反映しているなぁ、ってよくわかりません。
この、住民を説得するのに熱くなる[熱ベン]シーンは、ベンがいかに口先のおべんちゃらがうまい、有能なPRマンであったか? を観客に印象づけるシーンにするべきで、私はトンチを期待しましたが、イメージ的に処理されてしまって少々残念。
それはともかく、1990年代初頭の物語で、ベン・アフレックは元々、[フレッシュ・プリンス]のPRを担当していたのですが……とか、当時『キャッツ』が大流行していて学芸会では……みたいなサブカルネタで笑わせてくれます。
また、ニューヨークとニュージャージー、どちらで働くか? で悩むお話は、先の大統領選で明らかになった[アメリカの文化断絶]を鋭く暴くのであった。[アメリカの文化断絶]とは……と、全面的に展開しようと思いましたが、紙数が尽きたので後日。
ベン・アフレックは『グッドウィル・ハンティング』『アルマゲドン』以来の適役を好演、リヴ・タイラー、ベンの父親ジョージ・カーリン、娘ラクエル・カストロもよい感じ、小粒なお話なれど、ベンと因縁深いジェニファー・ロペス、マット・デイモンもちょっとだけ出演、無意味にゴージャス感があり、意外な拾い物って感じでオススメです。
☆☆☆★★★(☆= 20 点・★= 5 点)
BABA Original: 2005-Apr-22;