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 Movie Review 2004・11月6日(Sat.)

シークレット・ウィンドウ

 なぜ追われる、なぜ終わらない。ババーン! スティーヴン・キング短編『秘密の窓、秘密の庭』、ジョニー・デップ主演で映画化。『ジュラシック・パーク』『カリートの道』『パニック・ルーム』『スパイダーマン』など、ヒット作多数の脚本をを手がけてきたデヴィッド・コープが監督・脚本をつとめます。で、まあ、そういう感じでした。

 以下、ネタバレありです。

 まず、何だかよくわからない、いきなりクライマックスのオープニングでつかみはバッチリ、その後、主人公・小説家ジョニー・デップが置かれているシチュエーション――湖畔一軒家、一人、小説を執筆、スランプ中――を映像で語り、いきなりジョン・タトゥーロ、ババババババーン! と登場、「おめぇ、おらの小説をパクっただ! おめぇ、おらの小説をパクっただ!」…と、物語を起動させる手際は、さすが売れっ子脚本家デヴィッド・コープである! と私はうなったのでした。うーむ。うーむ。

 じわりじわりと、得体の知れないストーカー南部男ジョン・タトゥーロの言いがかりで、ジョニー・デップが混乱に巻き込まれていく、というお話です。実に手堅い演出かつ、ジョニー・デップほぼ全編出ずっぱり一人芝居が素晴らしく、奇妙な謎を少しずつちりばめ上質のサスペンス/ホラーに仕上がりました。といいたいところですが、やっぱりというか、ドーン! デーン! と、どんでん返しがあって、ちょっと興ざめでガッカリ、みたいな。

 と、いうのもですね、さすがはジョニー・デップ、主人公は「いいヤツ」でもないのですが、ジョニー・デップが演じると、仕草や、犬に話しかけるところなどがかわいい感じで、観客はみな、とりあえずジョニー・デップの味方になると思うのですよ。

 もし、ジョニー・デップが孤立無援となって、汚名をはらすために孤軍奮闘、痛い目にあってそれまでの人生を反省して奮起、ジョン・タトゥーロの邪悪さと戦う、みたいなクライマックスでしたら、陳腐ではあっても手に汗握る傑作になり得た、と思うのです。

 しかし、どんでん返し後に、ジョニー・デップは窮地におちいらず、それまで脇キャラだった奥さんがいきなり窮地におちいるわけで、そうなりますと、手に汗握ることができず、どうにもどうでもいい感じが漂ってしまって、不完全燃焼でございます。

 結局のところ、「観客を、誰に感情移入させるべきか?」という、観客心理を無視したヒネりで失敗している、と一人ごちました。「ヒネり病」の弊害でございます。脇キャラの奥さんをジョニー・デップに匹敵するくらい、愛すべきキャラにしておかないとダメなんではないでしょうか? ええ、その通りですね。自問自答してみました。

 それはともかく、一応よくできたお話ですし、ジョニー・デップは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・メキシコ』に続きノリに乗ってる感じ、『Oh ブラザー!』できたえた(?)ジョン・タトゥーロのアメリカ南部弁も素晴らしいのでオススメでーす。

☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2004-Nov-5