モーターサイクル・ダイアリーズ
遠い空の下、僕は世界がめざめる音を聞いた。ババーン! 名作『セントラル・ステーション』 (1998 年・ブラジル)ウォルター・サレス監督の新作は、のちに革命家チェ・ゲバラとなる 23 歳青年エルネスト、その友人・アルベルト、オートバイによる南米縦断 10,000 キロ珍道中を描くロードムーヴィーです。
南米ロードムーヴィーといえば、『ラテンアメリカ 光と影の詩』(1992 年・フェルナンド・E・ソラナス監督)、16 歳の少年が、自転車で(!)アルゼンチンからメキシコまで、5 万キロを旅するという傑作あり、『セントラル・ステーション』もまたロードムーヴィーでしたね。
つまり「ラテンアメリカのロードムーヴィー」というだけで傑作であること間違いない、この『モーターサイクル・ダイアリーズ』も、エルネスト+アルベルトが旅する南米の風景――世界遺産マチュピチュや、『アギーレ神の怒り』みたいな山河が圧倒的ですし、またゴミゴミした町並みを抜けるケーブルカーなど、とにかくカッコいい風景が連発されて、「行ってみたいなよその国」気分が澎湃とわき起こり、「チェ・ゲバラ若き日々」に興味がなくとも、とりあえずロードムーヴィーの魅力が炸裂していてお楽しみいただけるのではないでしょうか。
オートバイは旅の途中でぶっ壊れてしまってロードムーヴィーが停滞するや否や、映画は「アマゾン川ハンセン氏病療養所で〜、エルネスト・ゲバラが〜、出会った〜〜」(下條アトム風に読んでください)みたいな「世界ウルルン滞在記」ムーヴィーに転じ、「チェ・ゲバラ若き日々」的な、南米社会の矛盾にエルネストが苦悩し、いかにして革命家をこころざすようになりしか? その前章のおもむきとなります。
エルネストは療養所を去る前夜、アマゾン川を、ハンセン氏病患者がいる対岸へと泳いで渡ります。このクライマックスは、「革命家となる若者に必要な資質」を映画的なアクションで描いた名シーンでございましょう。もっとも苦しんでいる人々のそばに、命がけの遠泳でかけつけることができるのが革命家なのでしょうね、と一人ごちました。
そして、1952 年の過去のできごとを描いているはずなのに、ここで描かれる南米は、現在の姿なのではないか? という印象を受けます。南米ロードムーヴィー、チェ・ゲバラ若き日々、さらに南米の現実という多面的な見方ができますし、よくわかりませんが製作ロバート・レッドフォードなためか、『セントラル・ステーション』よりあっさりしておりますのでバチグンのオススメです。
☆☆☆★★★(☆= 20 点・★= 5 点)
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