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 Movie Review 2004・1月20日(TUE.)

ゴジラ×モスラ×メカゴジラ
東京 SOS

 前作『ゴジラ×メカゴジラ』の正統なる続編ですので、前作を見ていないとさっぱり面白くないのでご注意ください。前作を見ていれば面白いか? それはまた別の話。

 前作は、ゴジラの再上陸に備え「機竜(メカゴジラ)」を開発するお話で、「日本は自前の防衛力、大量破壊兵器を持てるか?」との政治的シミュレーション、それはそれで今日的ハードなテーマ、釈由美子の好演もあって面白かったのですが、今回はですね、インファント島在住の小美人が突如日本に現れ、「ゴジラの骨から兵器を作ったのは大きな間違いです! ゴジラが現れたときはモスラが日本を守ります! ゴジラの骨を海に返してください。さもないとモスラは人間の敵にならねばなりません!!」と、ワケのわからないことを言うのですよ。

 まず機竜は、隠れた意図として、アメリカのヒモ付きではどうにも不自由、日本人自らがコントロールできる防衛力をめざしているのですから、「代わりにモスラが守ります」と言われて「はいそうですか」と納得するわけにはいかないですよね。それに、モスラは小美人に操られる存在ですが、小美人が死んだらどうするのか? また、モスラみたいな超巨大生物、しかも卵を一ヶ産んでいたにしても一個体のみ、いつ死ぬかわかったものでなく、もしモスラが死滅したらゴジラの脅威に日本は無防備となるではないか、小美人はどう申し開きをなさるおつもりか? 結局のところ、この申し入れは日本自前の防衛力を快く思わないアメリカの陰謀で、小美人はアメリカの手先ではないか?

 当然ながら、小美人の申し入れを伝えられた日本国首相はそれを拒否、機竜は放棄されず、ゴジラとの死闘になだれこみます。しかし、前作で大きく痛手を負った機竜は本調子でなく苦戦を強いられ、あえなく沈黙。そこへモスラがかけつけ、果敢に闘いますが、モスラ弱い! って、放射能熱線を吐くゴジラと、「羽根バサバサ攻撃」「鱗粉ぷんぷん攻撃」のモスラでは攻撃力が違いすぎ、「よくもまあ、こんな非力さで日本を守るなどと言えたものよのう」と、私は呆然と一人ごちたのでした。

 と、いうか、そもそもゴジラにしてもモスラにしても、それは人間の知を越えた「神秘」に属しております。ゴジラという神秘に対し、科学が果敢に抵抗を試みているわけです。ですから、機竜に代わってモスラに国を守ってもらおうと考えるのは、科学の敗北、結局、日本の守りを「呪術」にゆだねるようなものです。国民レベルでは、呪術に頼るのも有効でしょうが、政府レベルでそうするわけには行かず、そこんとこ理解いただいて小美人は余計な口出しをするな! と私は一人ごちたのでした。

 小美人は、存在自体は神秘であるが人語を解する、神秘と人間の間を取り持つ「通訳」なのですから、「ゴジラの骨から機竜を作ったのは間違い」「モスラが代わりに日本を守る」など、「神秘」が思ってもいないことを伝えるのは、「通訳」の権限を大きく逸脱する行為であります。作り手が、「どうしても小美人を出したかったので…」と言うのなら、小美人のセリフは、「ゴジラの骨を海に返してください! さもないと…………、とんでもない恐ろしいことが起こるゾ!!」と恐怖におびえた表情で脅すだけでよい。

 …って、そもそも機竜の機能にゴジラの骨がどう生かされているかがさっぱり謎で、「ゴジラの骨を使った」という売り文句は、国民に何となく凄く思ってもらうための宣伝文句・情報操作に過ぎないのではないでしょうか。「マイナスイオン」みたいな? 実際のところゴジラの骨は使われていない、と私はにらんでいるのですがいかがでしょうか。

 ってそんなことはどうでもよくて、今回、特撮のテーマは「より生物感を出したい」だそうです。しかしやはり、出すべきは「まがまがしさ」ではないか? と私は一人ごちるのです。一作目、金子修介監督作『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』、異色の『ゴジラ対ヘドラ』など、子供にトラウマを残すような「まがまがしさ」こそ『ゴジラ』作品の成功に必須、と一人ごちるのです。

 異論はいろいろありましょうが、面白い続編とは、「なぜ正編が面白いのか?」を徹底的に分析しまくった地点から生まれるわけで、『ゴジラ』生誕 50 周年の今年、今一度、『ゴジラ』シリーズの魂を見つめ直していただきたいところです。とはいえ、『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』は別格、凄すぎてかすんでますが、手塚昌明監督三作は、近年のシリーズでは格段にマシな出来ですのでオススメです。

☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2003-Jan-18;

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