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 Movie Review 2004年12月10日(Fri.)

ゴジラ ファイナルウォーズ

 さらば、ゴジラ。ババーン!

 これまで何度も「最後、最後」といわれながら、だらだら作られ続けてきたゴジラ最新作。

 そうなんべんも最後、最後といわれると、さながら何度も「店じまいセール」と「オープンセール」をくりかえしたカフェ・オパール前の某ジーンズショップ・三信衣料、そのうちゴジラも、赤鬼らあめんになってしまうのでは……?

 …ってよくわかりませんが、今回ホントに最後かも? と思わせるのは、ラドン、モスラ、アンギラス、ガイガン、カマキラス、クモンガ、ミニラなどなどオール怪獣総進撃するわ、海底軍艦、妖星ゴラスも登場、アメリカ版GODZILLAも登場、まさしく在庫一掃処分、大蔵ざらえ、たたき売り状態で、ひょっとしたらホントにホントに最後かもーーっ? 女房を質に入れても見に行かなくちゃ! …なーんてだまされるほどお人好しではありません。って結局見に行っておりますが、最後を飾るにふさわしくお正月映画にふさわしく「ゴジラ生誕50周年」にもふさわしい、お祭り騒ぎっぷりが天晴れでございます。

 さらに私が感銘を受けたのは、ゴジラ映画の「安さ」を徹底的に暴いてしまったことです。この『ファイナルウォーズ』、特撮も安ければドラマも安くアクションも超安い、まさしく店じまいセールにふさわしい激安ぶりです。

 ひるがえって考えれば、記念碑的名作の一作目と、金子修介監督の掘り出し物大傑作『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』を除けば、ゴジラ映画は常に安かった。

 しかし、ばーーばーばばーばー、ばばばばー、と心躍る伊福部昭の荘重なテーマで始まり、名曲ゴジラ・マーチが流れると、なんとなくB、C〜Z級作品とは一線を画すお値打ち感に包まれていたところ、今回、音楽はなんとキース・エマーソン!(ギャラは高いのでしょうけど)シンセサイザー音楽で安さ炸裂! おまけにタイトルデザインは(ギャラは高いのでしょうけど)カイル・クーパー! …もう、最高に安いです。ゴジラ映画の値打ちを徹底的に価格破壊しております。

 では、つまらないかと申しますと開き直った感じが小気味よく、まったくタメなしにどんどんずんずん話が進むスピード感はちょっと『宇宙からのメッセージ』(深作欣二監督)タッチにも似て、北村一輝の下克上シーンは東映ヤクザ映画の雰囲気もあったりして、「おお! 面白いやん!」と一人ごちました。

 何といっても、「エックス星人」北村一輝が最高です。地球侵略にやってきて、最大の邪魔者=ゴジラの進撃をはばもうと安めの怪獣を次々送り込むシーンが素晴らしい。

 ゴジラが圧倒的な強さで、クモンガをぽーーーい! っと投げ飛ばすなど、カマキラスやらキング・シーサーやらをコテンパンにのすのですが、北村一輝がいちいち、「むおおおおおおおおおお!」「次いってみよー!」「ダメだこりゃ!」「マグロ食ってるヤツぁダメだな!」「ガイガアアアアアアン!!」など、地団駄踏むのが素晴らしいですね。ゴジラはこれで最後でもいいですから、「北村一輝星人」をシリーズ化してほしいです。

 さて。ゴジラシリーズといえば、自前の国防力問題など、常に政治的にアクチャルなテーマをあつかってきましたが、今回も鋭く政治的です。

 地球侵略をたくらむエックス星人は、アメリカ合衆国の寓意に他ならず、エックス星人にあやつられる宝田明・国連事務総長は、小泉純一郎首相を暗に皮肉っていると思われます。

 小泉首相「自衛隊のいるところが非戦闘地域だ!」などの亡国的発言に、私は奇異な印象を持っておりましたが、この作品を見て納得いきました。実は、小泉首相はとっくの昔にアメリカ人に精神をのっとられていた、あるいはアメリカ人が小泉首相の皮をかぶってすりかわっていた、ということなのでしょう。なるほど。

 閑話休題、ゴジラは「太平洋戦争で死んだ英霊の魂の集合体」という説があり、それによれば、エックス星人(アメリカ)の侵略を阻止するには、ゴジラ(英霊の魂)を蘇らせなければならない! しかしそれは両刃の剣である…みたいな感じで、やはりこの『ファイナル・ウォーズ』も一作目の設定を踏襲しながら、今日的な課題を描き出しているのであった。

 で、ありますから、ゴジラの強さとは「アメリカに戦いを挑んだ祖父の世代の怒りの強さ」に他ならず、圧倒的に強くなければならず、小物怪獣をけちらして富士山をバックにガオーーーッと雄叫びを上げるシーンは猛烈にカッコいいです。

 そういう点で、ボスキャラ相手にゴジラが苦戦するクライマックスは、間違っていると思います。やはりここは、すさまじくものものしく勿体つけてボスキャラが登場しても、ゴジラが一瞬のうちにやっつけてしまう。で、「おお! 凄いぞ!」「ゴジラ、ありがとー!」などと喜んでいる民衆を、ゴジラがシッポでぺしゃんとつぶしてしまい、再び東京を徹底的に破壊しつくす……それほどゴジラの怒りのパワーはすさまじく誰も制御できない……、という展開でしたら面白かったのに。と、えんえん続く、いつものような怪獣プロレスにアクビをかみ殺しながら一人ごちたのでした。

 北村一輝が活躍する中盤は素晴らしく面白いのでオススメです。次回作は、『ゴジラ VS 帰ってきた北村一輝星人』でお願いします。

☆☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2004-Dec-9