きょうのできごと
ぼくたちの小さな世界は どこかできっとつながっている。ババーン! 『GO』の行定勲監督の新作は、大学院生引っ越し祝いに集うヤング、ビルの隙間にはさまれたお兄ちゃん、浜辺に打ち上げられたクジラ、動物園のデートカップル、などが少しずつつながりをもちつつあまり関係なく、時系列を意味なくずらしながら大事件も起きない一夜の出来事を淡々と綴る青春群像でございます。
かねて『マグノリア』より当節流行の、登場人物多数を平行・均一に描く手法にて、この作品にしても四つほどの短編集にすればよいのに、と思いながらも、それぞれ短編として成立させるほどにはオチもなく、並べてみれば何らかの面白みも生まれてくるや知れぬ、みたいな感じ、って原作は短編連作なんでしょうか? ……って誰も答えてくれないので話を先に進めますが、実際、各パート登場人物が少しずつ関わりをもっているのがしみじみと面白い……はずなのですが、いまひとつ興が湧かないのは、主たる舞台が、なんと京都、少し詳しく述べるなら鴨川今出川周辺。つまり引越祝いは、京都市左京区で開催されたと推察する。
ここで提示される“つながり”は、こと京都市左京区では、日常茶飯的に発見されるつながり、というか、むしろ「薄いつながり」という印象で、たとえば正道くんは出町柳で、昔の友人・山田くん(山本太郎)とばったり出会い、いきなり城崎までカニを食べに行こうという話になった頃、中沢くん(妻夫木聡)は、カニの看板を見ている……なんて偶然なんでしょう! ワオ! と驚かれますか? いやいやいやいや、京都市左京区なら、引越祝いに集った男女は、みな同じ幼稚園出身であった! 一体なぜ!? ガーン! ……くらいの、ワケわからず息つまるくらい濃密な人間関係が当たり前なのが京都、左京区だと思うのです。いわば京都は、「政令指定都市の皮をかぶった村落共同体」であり、そういうムラ社会が舞台なら、この作品で描かれた“つながり”の数々は薄いのだ、と京都市(右京区)在住・私は一人ごちたのでした。
というか、「ぼくたちの小さな世界は どこかできっとつながっている」ってことですけど、小さな世界ならつながっていて当然ですよね? 例えば『ふたつの時、ふたりの時間』(ツァイ・ミンリャン監督)みたいに、台北とパリという、遙か離れた場所でつながっている、みたいな話なら面白いと思うのですけど。
そんなことはどうでもよくて、池脇千鶴や山本太郎が例によって素晴らしい関西弁をしゃべくるのみならず、妻夫木聡や田中麗奈の関西弁も板に付いた感じで気色よいです。そういう旬の若手俳優さんが、そこらへんどこにでも転がってそうな若者のリアルな日常を演じており、隣のいつもやかましい下宿を覗き見しているみたいな雰囲気があるのでオススメです。
☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)
BABA Original: 2004-apr-7