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 Movie Review 2003・11月21日(FRI.)

ブルドッグ

『friday』『ミニミニ大作戦』 F ・ゲイリー・グレイ監督新作。主演は『ピッチブラック』『ワイルドスピード』『トリプル X』と、着々とキャリア・アップのヴィン・ディーゼル、実は私、大のお気に入りが V ・ディーゼル、というのは何となく『キュピ・キュピ』石橋義正氏に顔が似ているから、という話はどうでもよくて、F ・G ・グレイ+ V ・ディーゼル初顔合わせ、今年最大の期待作なのであった。ババババババーン!

 で、結論からいうと、ダメでした。

 V ・ディーゼルは LA ・DEA (米麻薬取締局)職員、まずオープニング、麻薬組織大物ボスをメキシコまで逮捕にいくアクションがあります。上司が言うには、「拳銃は携行するな! なぜならここはメキシコだからだ!」、ブツブツ言いながらも DEA たちは拳銃をはずす……のですが、その後展開するアクションで、みんな普通に拳銃持ってるし。「なんやお前、拳銃持ってるやんけ!? ……って、オレも持ってるし!!」みたいなツッコミ→セルフツッコミが欲しいところです。と、いうか、ツッコミがないとボケてるかどうかよくわからないじゃないですか。

 アクションも、『ミニミニ大作戦』と打ってかわって、ごく普通のハリウッド・アクション、ちょこまかカットを割って、何が何だかよくわからなくなって眠くなるパターン、私は漠然とした不安感に襲われたのでした。…ダ、ダメかも。

 さて、大物ボスを捕らた報復で、V ・ディーゼルは最愛の女房を殺されてしまうのであった。ガガーン! V ・ディーゼルは、失意のどん底に沈み、海を眺めながらタバコをふかし、ウイスキーをガブ飲み…………って、なんでミニチュア・ボトルやねん!? アレ? ここもツッコミなしですか。

 それはともかく V ・ディーゼルは、もうブチ切れですよと服務規程違反をくり返しながら、麻薬組織の黒幕退治に暴走する話なんですけど、怒りに我を忘れて、組織の下っ端を殴り殺したりする始末です。そら、最愛の女房を殺した犯人を殺したくなる気持ちはわからないではないですけれど、“Revenge is a dish best served cold.”(復讐は冷ましてから食べる料理である)と申すではございませんか。ここはグッと我慢、最も効果的な復讐の機会をジッと待つべき、つまり、「女房を殺され自棄になり、怒りに我を忘れる政府の犬」なんて、全然 V ・ディーゼルらしくない! そんな自制心のないキャラはベン・アフレックにまかせておけばよい! と、私は一人ごちたのでした。

 V ・ディーゼルは、普通ならやれない、行きすぎ捜査をくり返しますが、例えばビューティ・サロン店主取り調べは、「身障者用スペースに駐車している」と難クセをつけ、殴る蹴るの暴行を加えます。そういう過剰捜査は『ダーティ・ハリー』などにもあり、アメリカ刑事物の定番ですが、「加害者の人権? 被害者の人権を踏みにじったヤツに人権などない!」というところに観客は溜飲を下げるわけですけど、ビューティ・サロン店主は怪しいけれども、まだその悪行は V ・ディーゼルには明らかにされておらず、そうなりますと V ・ディーゼルはただの「ヤケクソ刑事」、もうアホかと。

 この V ・ディーゼル、昔はストリートでならしたワルで、そういう経歴も生かして麻薬捜査にあたり、クライマックスは、昔のワル仲間と大ボスを倒しに行く、という大筋は V ・ディーゼルにピッタリなのですけど、V ・ディーゼルの V ・ディーゼルたる所以はいかなる窮地に立っても余裕をかませるところで、いわば、ジョン・ウェイン→クリント・イーストウッド→シュワルツネガー、という「やせ我慢」スターの系譜に連なるというのに、海をながめてタバコをふかし、ウイスキー(ミニチュア・ボトル)飲んでメソメソしてちゃアカンぞ、と私は一人ごちたのでした。

 やたら説明的なモノローグ、眠くなるアクション、粗雑な展開、穴だらけの脚本、『ミニミニ大作戦』の監督と同じ人とは思えませんが、きっと最終編集権を持っていなかったんでしょうね。いやはや残念でございます。とはいえ、黒人の家に飾っている油絵がなんかいやらしかったりするのでオススメです。

☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2003-nov-20;

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