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 Movie Review 2003・11月14日(FRI.)

ティアーズ・
オブ・ザ・サン

 ナイジェリア、イスラム系 VS キリスト教系、部族間の内乱勃発。アメリカ海軍特殊部隊=シールズ大尉ブルース・ウィリスは、ナイジェリア奥地へ潜入、米人女医(モニカ・ベルッチ)救出の任にあたるのであった。ババーン!

 ベルッチ一人を救出するなら、任務遂行率 100 %のブルース部隊にとってお茶の子さいさい、しかしベルッチ、「患者や看護師も一緒に脱出させろ」「村に戻って、村人を救え」とワガママ言いたい放題、このベルッチ、いかにもブルースの好きそうなタイプ=黒髪・ボインボイン・気が強い…なものですから、ブルースとち狂って「任務を粛々とまっとうするのはもう飽きた! たまには善行を積みたい!」と村へ戻り、イスラム兵を殺しまくるのでした。ババーン!

 パンフレットには、ナイジェリア情勢がどうなっているか? なんて話がほとんどないので Google 検索してみたのですが、ナイジェリアは、200 万人が死んだといわれる 1966 年のビアフラ戦争後、比較的豊かな南部・キリスト教系部族と貧しい北部・イスラム系部族、その他土着宗教部族など 260 の部族がおり、現在も部族間対立で年間 1000 人以上が亡くなっているそうです。

 2002 年には、富裕層が「民主化」の証として「ミスコンテスト」開催を計画、新聞が「ムハンマドも美人を見て喜ぶだろうし、そのうち一人を妻にするかもしれない」とイスラム教徒を揶揄する記事を載せたところ、それに抗議して「イスラム」と称する若者が暴れ出して、暴動に発展、200 人の市民が死んだとか。うーむ。

 閑話休題。そら、虐殺の現場を目撃すれば、それを阻止する武力を持つ者が介入せざるを得ない、というのはわからんでもないですけど、問答無用でイスラム系部族を最新兵器で殺しまくるのはいかがなものか? それに、例えば『ジェノサイドの丘(フィリップ ゴーレイヴィッチ著・柳下 毅一郎 翻訳)でレポートされた、ルワンダ 100 万人大虐殺のとき、見て見ぬふりをしたのはどこの国であったか? って、ルワンダは大した資源がないので知らぬふり、ナイジェリアは油田があるから介入する、というか、そもそも女医がモニカ・ベルッチでなく、例えばキャシー・ベイツだったら、ブルース大尉はかような行動に出たか? はなはだ疑問ですな、と私は一人ごちたのでした。

 監督は、ちょっと面白かった『リプレイスメント・キラー』『トレイニング・デイ』のアントワン・フークア。黒人監督だからでしょうか、ナイジェリアを「母なるアフリカ」、ナイジェリア人を「同胞」として美しく描いております…って、ハワイでロケされたそうですが、それはともかく部隊に黒人兵がおり、「大尉どの! 同胞が虐殺されているのは見捨てられません!」みたいなこと言ったりして、つまり「アフリカではブラザーが虐殺されているぞ、黒人諸君、アフリカに積極的に介入しようではないか!」というプロパガンダとなっております。

 で、クライマックス、国境に命からがらたどり着いた一行、しかし難民が詰めかけており、なかなか検問ゲートを開けてくれない! 後方にはイスラム兵部隊が迫る! ベルッチ思わず「開けて! 私はアメリカ人よ!!」…って、それまで「アフリカのためがんばってます、私の運命はアフリカ人と一蓮托生よ!」みたいな勢いだったのに…。白人リベラルの限界を暴く、フークアの非情なリアリズムに、私は呆然と感動、というか大笑いしてしまいました。はっはっは。

 そんなことはどうでもよくて、後半、部隊が内乱に介入する決意を固めてからのアクションがカッコよく、隊員が一人、また一人と死んでいくのが涙を誘う…こともなく、いまいちキャラ立ち弱く、スカッとしません。ブルース一行、危機一髪の瞬間、CG の戦闘機がかけつけ、ドカンドカンとイスラム部隊を爆撃するのも気分悪いです。イスラム兵が、まるでナチスドイツのような、あるいは『ウインドトーカーズ』の日本兵のような、「絶対悪」として描かれているんですね。面白ければ文句はないのですけれど。

『パール・ハーバー』『ブラックホーク・ダウン』がお好きな方にはオススメです。ちなみに『パール・ハーバー』と同じ、ディズニー傘下のブエナ・ビスタ作品でした。

☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2003-nov-14;

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