8 Mile
バチグンの傑作『L.A.コンフィデンシャル』監督カーティス・ハンソンの新作。して、これが、人気白人ラッパー、エミネムの自伝的要素が強いサクセスストーリー。
エミネムやヒップホップを知らないダサいオジサン(あ、私か?)が見ても、存分に楽しめるというか、オープニング、エミネムのラップ練習はまさにシャドウボクシング、MC バトルはボクシングの試合のように撮られており、貧乏白人が黒人に挑戦する図式は『ロッキー』のようであり、立ったままイタすシーンは『さらば青春の光』を思い出したり、とか、そんなことはどうでもいいのですが、さすがカーティス・ハンソン! 脇役のキャラを立て、手堅い演出、例えば主演が有名ラッパーでなくても「青春映画」として見事に成立するのではないでしょうか。
さてここで、ひとラップ。
ヨー、ヨー、ヨー、チェキラ、ワンツー
さすがカーティス キャラ立ちバッチリ
さすがカーティス 演出ガッチリ
さすがカーティス オススメバッチリ!(スクリーム!)
そんなラップはどうでもいいのですが、スターミュージシャンの成功の道筋をたどる作品というと、プリンス『パープル・レイン』、マライヤ・キャリー『グリッター きらめきの向こうに』などがあり、ともすると「私/俺の才能はこんなに凄いんだぜ、メーン」と自慢ふんぷん、『パープル・レイン』はその辺が超最高でしたが、『8 Mile』の場合、主人公エミネムはバリバリのホワイトトラッシュで、ビンゴ狂いの母親のトレーラーハウスに居候、プレス工場で黒人主任ににらまれ、と、ホワイトトラッシュにも程がある! という「恥ずかしい過去」をさらけ出し惻隠の情をそそります。エミネム氏は元来キレやすい性格らしいですけど、さすがカーティス・ハンソン! エミネムから見事な好演を引き出しております。俳優としても充分やっていけるのでは?
エミネムは、「恥ずかしい貧乏白人」である自分を直視してラップに昇華させることで、見事に勝利を手にします。と、いうか、ここでは、黒人と白人の立場がすっかり入れ替わり、白人がマイノリティとなっているデトロイトの現状、「アメリカの現在」が鮮やかに切り取られているのであった。って、よく知りませんが、白人が黒人に認められることを「成功」として描いているわけで、「いつの間に白人はこんなに謙虚になったのか?」と、呆然と一人ごちました。
それはともかく、キム・ベイシンガーのダメ母ぶりが最高、爆笑シーン満載、エミネムの白人友達も愉快にして、ヒップホップファンは勿論のこと、そうでない方にもビートを刻んでゴーゴー! って感じのバチグンのオススメ。とにかくラップシーンのみならず、素のセリフもカッコいいので、2 回くらい見たい感じですわ。
☆☆☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)
BABA Original: 2003-May-31;- 関連記事
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