ザ・コア
さて、地中奥深くの「外核」では、地球の自転で液体状の鉄が流れており、それは強い電流を生み、磁場を発生させております。磁場は宇宙にまで達して磁気圏を形成し、太陽風から地球を守っているのであった。
それが突如、外核の回転が停止、磁気圏は消滅の危機に瀕します。世界各地、太陽風の影響で天変地異が続出してさあ大変! アメリカは、密かに科学者、軍人らで「地中潜行士(テラノーツ)」を編成、地中深く潜って外核近辺で核兵器を爆発させ、外核を再び回転させんと、壮絶なドラマが展開します。プロジェクト・エーークスッ!
静止状態の外核を再び回転させるほどの核爆発を起こせば、地表も大変な地震が起こりまくると思うのですが、はて? という疑問はおいといて、お話は『アルマゲドン』クリソツでございますが、あの場合、世界各地の都市が壊滅したのは、「彗星飛来」という、人類には責任のない原因でした。それに対し、ネタバレですけど、今回は「アメリカの地震兵器開発」が天変地異の原因とされます。それならば、アメリカの兵器産業や産軍複合体制が批判されてしかるべきなのに、そんなことは及びもつかないとばかりに、「我々が地球を救うのだ!」と勇躍地中に潜行していくのはいかがなものでしょうか?
アメリカの無謀な兵器開発が、例えば世界遺産・古代ローマ遺跡群を徹底的に破壊してしまっているというのにだ、まったく反省の色を見せないとは、アメリカは何様のつもりでしょうか。あ、アメリカ様でしたね。
地中潜行作戦は、数名の犠牲者を出したものの見事成功します。厳重な情報統制が敷かれ、事件は闇に封印されかけますが、「地球を救うために犠牲になった者たちの、勇気ある行動が公にならないのはけしからん」と、事件の顛末がインターネットで暴露されます。事件が公になるのはいいのですけど、ちょっと違う、と思うのです。もし犠牲者が出ていなかったら、真相は明かされなかったわけでしょう? 「アメリカの失敗を反省し、世界の人びとにお詫びするため真相を明らかにする」というのが真っ当なところではないでしょうか? まったくアメリカ映画の正義・道理・倫理は狂っている、と一人ごちざるを得ません。
アメリカが勝手に地球を危機に陥れ、そこで世界の協力を仰ぐでなく、失敗する可能性が大きい作戦でたまたま地球を救う、という筋立ては、さながら、世界で横暴を極めたがために同時多発テロを引き起こし、国連中心に解決するのでなく、「例えアメリカ(とイギリス)だけでもやってやる!」とイラクを攻撃した経緯と一致し、『ザ・コア』は、まさに現代アメリカ帝国の「ユニラテラリズム(一国主義/単独行動主義)」が露骨に表象された映画と言えよう。適当。
そんなことはどうでもよく、例によって CG 満載、人類がかつて到達し得なかった地中奥深くは、CG が溢れかえる世界だった! というのに軽い目眩を憶えました。その CG も結構ショボかったりします。SF のくせに「想像力(Imagination)」が圧倒的に不足しております。というか、最近は CG 技術の進歩で「ショボい特撮」になかなかお目にかかれなくなっておりますが、例えば映画の始め、スペースシャトルの不時着シーンなど、スケール感狂いまくりで、ああ、こういう脱力感は久しぶりですな、って感じでお楽しみいただけるかも知れません。
監督は『コピーキャット』『エントラップメント』のジョン・アミエル。ツッコミどころ満載の作品を撮る監督として定評がある…かどうかは知りませんが、とりあえず世界各地で天変地異が続出する前半はテンポがいいのでオススメです。
★(☆= 20 点・★= 5 点)
BABA Original: 2003-Jun-26;