トーク・トゥ・
ハー
ペドロ・アルモドバル監督最新作です。米アカデミー最優秀脚本賞を取ったり、予告編で、おすぎ氏が「100 年分の涙を流してください!!」と煽ったり、と、前作『オール・アバウト・マイ・マザー』あたりから、アルモドバル作品は、以前のような、ミニシアターでこっそり公開されるサブカルチャーなポジションから、メインストリームに躍り出たみたいな、ってよくわかりませんが、やはり観客の倫理観に挑戦している、というより、ちょっと変なアルモドバルの倫理は相変わらずで、そうそう一般受けする映画でもなかろうに、と一人ごちたのでした。
ネタバレですが、要約すると、ベニグノは、自宅前の、バレエスタジオに通うアリシアにストーカー行為を行っています。ところがある日、アリシアは交通事故で昏睡状態となる。優秀な看護師のベニグノは、運良く(?)アリシアの担当となり、献身的に介護を続けていましたが、ある日、コトに及んでしまい、アリシアを妊娠させてしまいます。すると、あら不思議、アリシアは意識を取り戻したのでした…と、いうお話。
ベニグノは、アリシアの枕元にキリストの祭壇を飾ったりしますので、きっとカソリック信者。アリシアは 4 年間昏睡を続けた後の覚醒を遂げ、医学的にはありえない「奇蹟」と言われます。
もし、これを「奇蹟」とするならば、ベニグノは殉教者でありましょう。何に殉教したのか? それは、「美」に殉じたのである。…って、背中が痒くなるような話はおいといて、逆に、「この世に神などいない」「奇蹟など無い」とするならば、ベニグノの行為は、許しがたいストーカー行為であります。
しかし、一方でベニグノの献身的な介護があったからこそ、アリシアも甦ることができたわけで、これを一体どう見たら良いのか? そうは言っても、アリシアの意志はどうなるのか? 無抵抗の患者に手を出すというのは、職業倫理にもとるのではないですか? ベニグノ自身にその葛藤が見受けられず、この点では消化不足、気持ち悪いじゃないですか。いやいや倫理なき、一方的な愛もあるのさ、ベニグノってちょっとキモい、とか色々考えているうちに、泣き所がわからない、みたいな。
そんなことはどうでもよくて、リディアの闘牛シーンは、バチグンの素晴らしさで、思わず「スペインで闘牛を見なかったのは、大失敗!」とごちるほどですし、突然登場するブラジルの歌手カエターノ・ベローゾの歌声は、わけもわからず感動しますし、オープニングとエンディングを飾るピナ・バウシュのダンスも最高でございます。オススメです。
☆☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)
BABA Original: 2003-Jul-29;