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 Movie Review 2003・1月29日(WED.)

犬夜叉
鏡の中の夢幻城

 高橋留美子原作の人気アニメ映画版 2 作目です。ちなみに私、少年サンデーの連載を少し読んだくらいで、前作は見ておりません。ので、この「犬夜叉」世界がどういうものなのかいまひとつ判然とせぬのですが、さておき、映画は犬夜叉一派(セーラー服の女子高校生含む)と、「奈落」と呼ばれる蜘蛛のお化けとの壮絶なる闘いで幕を開け、まあとにかく壮絶で、「とりゃあああ」「おりゃあああ」とかけ声のやかましいことはなはだしく、こうなると安眠妨害ですよね、って寝に行ってるんかい! と一人ボケツッコミしている場合ではなくて。

 いや、寝に行ったわけではないのですが、どうやら神久夜(かぐや)という、映画版だけのスペシャル・キャラクターがおり、竹取伝説と羽衣伝説を折衷しつつ、どういう仕組みかよくわからないのですが、富士五湖にですね、火鼠の皮衣(ひねずみのかわごろも)などのアイテムを、

 逢ふこともー
  なみだに浮かぶわが身にはー
   死なむ薬も何にかはせむー

 と和歌を詠じながら投げ込んで、神久夜さんは見事復活を遂げたのであった。ちなみに神久夜さんの声は、原田美枝子だ! ババーン!

 クライマックスは神久夜さんと犬夜叉一派の対決なのですが、これがまた大迫力でして、「とりゃあああ」「おりゃあああ」「犬夜叉、おすわりぃぃぃっ!」とやかましいことはなはだしく、安眠妨害ですよね。むにゃむにゃ。

 それはともかく、冗長な段取りを踏んで復活した神久夜さんですが、何のために復活したのかよくわからないのですよ。というか、小豆を洗ったり、天井を舐めたりなど、わけがわからないことをするのが妖怪ですので、別に構わないんですけど、神久夜さんは「半妖」である犬夜叉を「本妖」にすべく全力を尽くします。

 あ、「半妖」について説明しておくと、犬夜叉は「半妖」すなわち「半分人間/半分妖怪」の存在…って、「人間でもない妖怪でもない、妖怪人間なのだ」みたいなものだと思うのですけど、妖怪人間が人間になりたがったのとは逆に、犬夜叉はほんまもんの妖怪になりたいらしい。しかし、女子高生が「今のままの犬夜叉が好き!」というものですから、まんざらでもないので本当の妖怪になりきれない、というのが「お約束」のようです。というか、時代設定は平安時代みたいですけど、セーラー服で、ウロウロするのはいかがなものか、女子高生。

 さて、神久夜さんは、犬夜叉を本妖怪に変えようとする。犬夜叉は抵抗する。結局、女子高校生のパワー・オブ・ラヴによって神久夜さんの目論見は失敗する、という結末。

 すなわち半妖である犬夜叉とは、大人になりきれない不安定な思春期の青年であります。神久夜さんは、犬夜叉を成長させようとするが、結局犬夜叉はマージナルな存在に留まり続けることを選ぶ。マージナルであってもキスとかエッチとかしたいしー、みたいな? …むむ。すなわち、『犬夜叉』とは、いい年になってもアニメ大好きなままでい続けたい漫画オタク・アニメオタクの本質を映す鏡に他なりません。私は、『犬夜叉』人気の秘密を見たゾ、と一人ごちたのでした。

 そんなことはどうでもよくて、緊張感高まる戦闘シーンにもところどころギャグがかまされるのが新鮮、それ以外は大いに眠気を誘うのはいかがなものかと思いますけど、オススメ。ですが、原作漫画を読むなどしてある程度、犬夜叉世界がどういうものか了解しておいた方がよろしいかと。

☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA

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