京都三条 カフェ・オパール Cafe Opal:Home

Home > Reviews > 03 > 0110
 Movie Review 2003・1月10日(FRI.)

ガーゴイル

『パリ、18 区、夜』のクレール・ドニ監督新作。今回は、ヴィンセント・ギャロ、ベアトリス・ダルというビッグネーム夢の共演です。宣伝コピーは「逃れられない哀しみに囚われた 2 人のガーゴイル」っちゅうことで、何をおっしゃっているのかよくわかりませんが、タイトルにもなっている「ガーゴイル」とは、ゴシック建築の教会などの軒から突きだした雨樋なんですけど、ゴシック建築は構造上、雨が壁を傷めないよう雨樋を突き出す必要があり、ただ突きだしただけでは面白くないというので、当時の石工たちが腕をふるって子鬼やなんかの意匠を凝らしたとか。で、映画に一瞬ガーゴイルが登場しますが、お話とはまるで関係がなく、英語題名は“Trouble Every Day”という身も蓋もないというか、面白くもなんともないものであって、映画は微妙に「モダンホラー」な雰囲気が漂うものですので、ガーゴイル→ゴシック建築→ゴシックホラー→モダンホラーという連想が働きますからまあ良いとして。

 そんな話はどうでもよくて、確とは状況を示さず、時間軸もずらしつつ断片的な情景を積み重ね、多くを説明しない演出はなかなかに気色よろしく、やたらとムーディーかつ思わせぶりな割には「なーんや、そんな話かい」とツッコミを入れたくなるところでございますが、まさかこんな話とは知らずに見た私は展開されるエログロにのけぞったのであります。

 で、若干ネタばれですが、ヴィンセント・ギャロ、ベアトリス・ダルは、性交に臨んで絶頂を迎えるその瞬間、相手を食い殺してしまう奇病の持ち主なのであった。「奇病」とは失礼な、多用なセクシュアリティのあり方を認めぬファシストめ、とお怒りの方もおられるかと思いますけど、彼らは、謎の「薬草」を食したがためにかような「奇病」に罹患したそうですよ。うーむ、「薬草」などというとってつけたような原因は設定せずに、なんだかよくわからないけれど相手を食い殺してしまうという風に、ぼやかしておいた方が観客の内なるセクシュアリティにアピールしたのではないかしら? と思うのであった。

 ヴィンセント・ギャロ、ベアトリス・ダルの捨て身の人食い演技が素晴らしく、パリの風景も気色よく、ヴィンセント・ギャロが高名な脳学者にまったく見えないのも見どころです。オススメ。

☆☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA

レビュー目次