Mr. ディーズ
『ウエディング・シンガー』『ウォーターボーイ』『ビッグ・ダディ』『リトル・ニッキー』のアダム・サンドラー主演最新作! …ってだけでワクワクなのは私だけでしょうか? 今回は、大企業オーナー社長が急死、400 億ドルの遺産相続人は、ニューハンプシャー在住ロングフェロー・ディーズという青年であった。Mr. ディーズがニューヨークで大騒動を巻き起こす! ババーン! …って、あんまりといえばあんまりな設定に心が虚しくなってしまいましたが、実は、フランク・キャプラの名作中の名作『オペラ・ハット』(1936 年)のリメイクなのであった! ババーン! 『オペラ・ハット』の原題は“Mr. Deeds Goes to Town”、「Mr. ディーズ」といえば『オペラ・ハット』、映画好きなら遠の昔にご承知なのでしょうが、私は見ている途中まで気がつきませんでした。エヘ。
それはともかく、今回アダム・サンドラー演じるのは、驚くべき事に、馬鹿ではないのであった。田舎町でピザ屋をまともに経営し、詩作もたしなむ普通の知性の持ち主です。しかし、田舎者の上に、昔気質の人間なので、馬鹿に見えてしまうのであった。笑いのネタは、金持ちと貧乏人のギャップ、都会と田舎のギャップ、加えて昔気質と現代人のギャップ、というところでして、アダム・サンドラーがゲーリー・クーパー的・アメリカン・マッチョなキャラクターを演じているだけでゲラゲラですね。例えばこのディーズ氏、「レディーの前で汚い言葉を使うな…警告したぞ!(I warned you.)」と、いきなりボカスカ殴る蹴るの暴行を始めてしまう、というのは、『オペラ・ハット』製作当時すでに失われつつあった気質なのでしょう。そういう古き良きアメリカ人気質を墓場から復活させて、現代の腐朽したアメリカ資本主義に必要なものは何か? アメリカ人は何を忘れてしまったのか? を鋭く問う内容になっているのであった。そう、フランク・キャプラの時代には有効であったアメリカン・ドリーム再生の必要性を訴えているのでした。
そんなことはどうでもよく、Mr. ディーズの召使い役はジョン・タトゥーロ、余裕しゃくしゃくのコメディ演技がおいしいし、あんまりといえばあんまりなお約束の展開に唖然としつつもほんわかと幸せな気分になれるのでオススメです。フランク・キャプラの『オペラ・ハット』も政治映画の古典ですのでオススメですよー。
☆☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)
(BABA)