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 Movie Review 2003・2月17日(MON.)

レッド・ドラゴン

『羊たちの沈黙』(略して『羊沈(ひつちん)』)がバカ当たりしたばっかりに、アンソニー・ホプキンス=レクター博士という図式が出来上がってしまってとりあえずその線で儲けられるだけ儲けようと無理矢理『ハンニバル』を作ってはみたものの、アンソニー・ホプキンスは恰幅のいいスノッブオヤジに変貌してしまってて、とてつものうつまらない作品になってしまったというのにだ、性懲りもなく『羊沈』の前日談である『レッド・ドラゴン』を映画化するとは何たる無駄。で、今回の作品は、『ハンニバル』よりマシですが『羊沈』よりはだいぶん劣る出来。と、いうか、「猟奇殺人」「快楽殺人」というネタはもう飽きましたよね。

 それはともかく、この『レッド・ドラゴン』、『羊沈』がブレイクする以前 1986 年、マイケル・マン監督(『ヒート』『アリ』など)によって『刑事グラハム/凍りついた欲望』として一度、映画化されております。マイケル・マン版は、ムーディーな異色の刑事ドラマ、というか、しっかりとマイケル・マン監督のスタイルが貫かれており、勿論レクター博士(演じるのは、最近では『オールド・ルーキー』のお父さん役のブライアン・コックス)も登場、「ただの中年太りのおっさん」風の脇役でカリスマ性は薄いものの、映画自体は地味ですけど上出来の部類、異常犯罪者を追う者は異常な精神の領域に踏み込まざるを得ない、っちゅう感じで面白かったんですけど、今回の映画化ではそのへんがスッポリと抜け落ち、ごくごく普通の刑事ドラマ。

 やはり、このお話の肝心要は、主人公グラハムと連続殺人鬼“噛みつき魔”との対決/対比でなければならないのに、レクター博士がクローズアップされすぎて、“噛みつき魔”が脇役扱いになってよくわからない話になっております。グラハム刑事をエドワード・ノートンが演じているというのに苦悩・葛藤がさっぱり描かれずごくごく普通の FBI 捜査官でしかないのも勿体ないです。

 監督は、明朗快活コメディ『ラッシュ・アワー』シリーズのブレット・ラトナー、脚本は『羊沈』のテッド・タリー、音楽がティム・バートン作品でおなじみのダニー・エルフマン、脇でハーヴェイ・カイテル、エミリー・ワトソン(『奇跡の海』など)が好演していたり、と、面白くなりそうな要素は色々あるのですけれども、結構眠いです。

 かといって見どころが無いわけでなく、アンソニー・ホプキンスは、本人が意図しているかどうかは別にして、セルフ・パロディの域に達しており、監獄で高級料理を召し上がるシーンとか、レクター博士っぽい言動/行動を見せるたびに結構笑えるのでした。

 こんな映画の話はどうでもよくて、トマス・ハリスの原作はメチャクチャ面白いのでオススメです。

☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA

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