コンフェッション
アメリカのヒット番組『ゴングショー』の生みの親・テレヴィプロデューサーにしてホストも務めたチャック・バリスの自伝を、ジョージ・クルーニー初監督で堂々映画化でございます。
その昔日本でも放映されていた『ゴングショー』は、ビートたけし「テレビに出たいヤツ、みんな来い」の元ネタ、今どきの素人参加番組の先駆け、テレヴィに出るため恥をさらして恥じることのない恥知らずな大衆を大挙生み出したわけで、最近のテレヴィ番組のほとんどは C ・バリス氏を父と仰がねばならないと思うのですが、C ・バリス氏は、くだらない番組をつくった自分のくだらなさを告白していきます。
視聴者参加番組の舞台裏を描くだけでも存分に面白い話になったと思うのですが、このバリス氏、ある時はテレヴィプロデューサー、またある時は、何と! CIA の非合法エージェントで、33 名を暗殺したと告白しておる。何と。
自伝というものはそもそも記憶の捏造もあいまって、どこまで本当か判然とせぬもの、また G ・クルーニーの演出は C ・バリス氏が本当に CIA エージェントであったかどうか? について検証せぬままエンターテインメント演出に徹し、C ・バリス氏の告白はとことんウソっぽいんですけど、「CIA エージェント」とはすなわちテレヴィプロデューサーのメタファーで、テレヴィプロデューサーは人を殺して良心の呵責を感じないヤツが就く職業、数々のヒット番組は 33 個の死体のようなものである、お見合い番組「デイティング・ショー」の賞品旅行付添人として、ヨーロッパに暗殺旅行を出かけるところとか、CIA の阿呆さを揶揄する感じのおかしみがにじみ出、「アメリカ人を駄目にしているのは、テレヴィと CIA である」みたいな感じ、G ・クルーニー、なかなかやるやん、しかし、ソダーバーグの『トラフィック』っぽくシーンごとに色調を変化させるのはやり過ぎで映像が汚くなっちゃいました。
それはともかく脚本は、『マルコビッチの穴』など、不条理脚本で人気急上昇スチュアート・カウフマン。この『コンフェッション』もどこまでが本当の話かさっぱりわからない感じの、けったいな作品ですけれど、なんか『ビューティフル・マインド』みたいで面白くない、むしろ、ハードな実録タッチに仕上げれば傑作になり得た、惜しい、と一人ごちたのでした。
そんなことはどうでもよく、C ・バリス氏と対比される、純情無垢な彼女役・ドリュー・バリモアが超かわいく、また、さすが自身が監督なだけあって G ・クルーニーもすこぶるカッコよいです。主演はほぼ無名のサム・ロックウェル。ロバート・ダウニー・Jr とキャラがかぶっている感じで好演。70 年代アメリカテレヴィ界の内幕(CIA 暗殺業務の内幕も?)が垣間見られるし、G ・クルーニーとお友達のビッグ・スターもちょろちょろ出てますのでオススメです。
☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)
BABA Original: 2003-Aug-26;