さよなら、クロ
長野県の松本深志高校に、黒い野良犬がさまよいこみ、生徒に弁当をわけてもらったり、用務員室に住みつき夜警に同行したり、我が物顔で教室・廊下をうろつくのであった。ババーン!
と、動物と生徒・先生諸君の、心あたたまる交流を描いているのですけれど、監督は『バタアシ金魚』『トイレの花子さん』『私たちが好きだったこと』など、私が好きだった松岡錠司です。『トイレの花子さん』が典型ですが、予想よりも面白い映画を撮る達人でして、この『さよなら、クロ』も、ほのぼの動物映画の枠(?)をはみ出して、意外な拾いモノ(予想済み)でした。と、いうほどでもないのですけど、演出の重点は、主人公・妻夫木聡君(『ウォーターボーイズ』)のあっさりとした初恋に置かれており、妻夫木君の好演もあり、長野県の風景も素晴らしく、気持ちの良い映画でございました。
1960 年代当時、妻夫木君がデートを重ねる映画館で上映されているのは、『卒業』(1967)、『俺たちに明日はない』(1967)などのニューシネマで、カウンターカルチャーの勃興期、都会では学生運動華やかな頃、しかし長野県・松本深志高校周辺ではそんな喧噪は無縁、学校に犬がいついても無問題、妻夫木君が 12 年留守にしていても、学校にはクロがおり、初恋の彼女に恋心を打ち明けることもできる、そういうゆっくりとした時間の流れが、疲れた都会人の心をほぐしてやさしい気分になれることうけあい、この夏いちばんの「癒し系」映画でございます。なんといっても、クロちゃんがめちゃめちゃ可愛く、ジッと見つめられて私は、「どうするアイフル?」と思わずつぶやいたのでした。
実話に基づいたお話ですが、話が出来すぎのところも多々あります。クロちゃんが死んじゃって全校挙げての「犬の葬式」がとり行われますが、生徒の中には「たかが犬が死んだだけじゃん?」とか、校長先生が弔辞を読み上げるシーン、犬に向かってヒトの言葉で難しいことを言っても通じないのでは? など、醒めたことを言うヤツもいるはずで、松本深志高校の人がみんないい人ばかりなのが物足りませんが、そういうものなのかも知れませんね。ってよくわかりません。
ともかく大いに感動、犬・動物好きはもちろんのこと、そうでない方にもオススメです。
☆☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)
BABA Original: 2003-Aug-19;