10日間で男を
上手にフル方法
女性誌「ハウトゥもの」担当記者・ケイト・ハドソン(『あの頃、ペニー・レインと』のペニー・レインさん)は、色々あって「男に 10 日間でふられる方法」を書かねばならぬハメに。おや? 原題も“How To Lose A Guy In 10 Days”なワケですから、『上手にフル方法』という邦題は看板に偽りありではないですか? 「上手にふられる方法」でなくては。
さらに、劇中カーリー・サイモンの大ヒット曲「You're So Vain」が使われているのですが、字幕での曲名が「カッコつけのキミ」になっておる。『うつろな愛』という歴とした邦題があるのにだ。うーむ。
そんな重箱の隅をつつくような話はおいといて。ケイト記者は、まず男をひっかけ、そののち「恋愛で、やってはならないこと」を続々と繰り出し、ふられるように仕向けるのであった。しかし! お相手マシュー・マコノヘイも仕事の野望のためつき合っていたのである。マコノヘイは広告代理店勤務、ダイアモンドの広告を担当するために、女心がわかることを証明しなければならず、それには 10 日後のパーティに相思相愛の彼女同伴で出席しなければならないのであった。
女はふられなければならない、男はふってはならない、と、いうことで、ケイト記者の「ふられるためのハウトゥ」はますますエスカレートして抱腹絶倒! おヘソが茶を沸かすこと必至のラブコメディである! ババーン!
しかし、たとえばイラク VS 米英の戦争報道において、マスコミ+広告代理店が捏造・虚偽報道をくり返し、その道義的責任に疑問が投げかけられている昨今に、かようなラヴゲームにうつつを抜かしているとは、その厚顔無恥ぶりに恐れ入った次第。て、いうか、阿呆なラヴゲームにうつつを抜かしているから、捏造報道をくり返すはめに陥っているのでしょうかね。やれやれ。
そもそも主人公二人に、自分たちが熱中するラヴゲームが、いかにくだらないものか? との自問がない。仕事のために、恋愛を、人の心を弄ぶことに反省がない。まったく、あなた方は虚ろですね、You're So Vain って感じです。
元来、ラヴコメディやスクリューボールコメディの主人公たちは、あり得ない設定の中で、道徳的・道義的には許されないことをしがちです。観客の共感を得るには、俳優が、道徳的・道義的批判をはね返す強さを持たなければなりません。ケイト・ハドソン+マシュー・マコノヘイ主演二人は好演ではありますが、いかにも弱い、と思うのですね。笑えるはずのシーンなのに、二人とも、仕事のために恋愛しているだけやん、それって資本主義の奴隷じゃん? と、呆然と哀れを感じたのでした。
笑えるシーンはあるものの、やはり、すぐに、なんだか悲しくなってしまいました。アメリカ好きの方にはオススメかも知れません。
☆★(☆= 20 点・★= 5 点)
BABA Original: 2003-Aug-14;