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 Movie Review 2003・8月11日(MON.)

踊る大捜査線 The Movie 2
レインボーブリッジを
封鎖せよ

 人気テレヴィシリーズの映画版、第二弾。刑事ドラマですが、ここでの警察は、会社一般の寓意となっとりまして、今回、組織論の趣をさらに強めております。

 それはともかく、回を重ねるごとに、現場・青島君と、管理職・室井さんの対立がだいぶんとこなれてしまって、もはや対立軸となり得ないと、今回、女性管理官・沖田警視正という新キャラが導入されます。

 女性管理官・沖田は、湾岸署に現れるやいなや言い放ちます。「ふふん、キミが青島くん? 言っとくけど、事件は現場じゃなくて、会議室で起きているのよ!!」

 …何だ何だその言い草は? 「事件が起きている場所=現場」、「会議する部屋=会議室」という、我々の通念を覆す物言いは? と、言うか、現場で事件が起きていないなら、それは現場ではなく、会議室で事件が起きているなら、それが現場ではないか? 何をわけのわからないことをおっしゃるのか? 言いがかりにも程があります。

 女性管理官・沖田氏は、登場した瞬間から痛すぎるのですが、その後もわけのわからない言動をくり返し、勝手に自滅していきます。…何がしたくて登場されたのでしょうか? 颯爽と登場した割には無駄キャラです。と、いうか、そもそもキャラを立てる努力をしていないじゃないですか。

「キャラが立つ」とは、どういうことでしょうか? すなわち、キャラが外面を破って、内面の本質を除かせることだと思うのです。女性管理官・沖田を、最初からワケのわからないキャラとして登場させては、駄目なのです。まずは、彼女の敏腕ぶりを見せなければならない。凄腕女性管理官が、段々と壊れていくプロセスを、伏線を張りつつ小出しに描いて初めて、キャラがダーン! と立って、「映画」となるのである。ていうか、彼女の言動が珍妙過ぎるというか、単なる「周りの空気が読めない人」で、大木こだまなら「そんなヤツぁおらんやろ」とツッコむはずです。

 また、例えば、ユースケ・サンタマリアは、今回、LA で研修を終えた「ネゴシエイター」として登場、犯人像を的確に描写し、切れ者ぶりを発揮します…って、それは「プロファイラー」の仕事ではないのか? という疑問はおいといて、片思い雪乃さんが犯人に拉致されたときの彼の反応はいかがなものか? ここは、ユースケ氏、後先考えずに現場に駆けつけ、湾岸署精神(ソウル)を甦らせるべきではないのか? この、おいしいシチュエーションに、ユースケ氏は会議室でボケーッとするのみ。そんなヤツぁおらんやろ。

 と、いうか、納得のいかないところばかりです。ネタバレですが、すみれさんが重症を追い、病院に運び込まれます。そこで青島君はテレビに向かい、半ベソをかきながら「湾岸署は血液を求めてます! 仲間を助けてください!!」と訴えます。一般市民が献血に列を作る…という、涙がチョチョ切れる感動の展開を見せるのですが、おいおい、手術に血が足りないというなら、血液型くらい言うのが道理でしょう? 世間の人は、自分の血液が役に立つかどうかもわからず、献血にかけつけるほど甘くないと思うのですけどいかがでしょうか。あ、これは、一般大衆諸君が、テレヴィというメディアに、いかに踊らされやすいかを、暗に皮肉っているのですね。なるほど。

 かように、今回は「キャラの立て方」「伏線の張り方」「布石の置き方」が浅はか、無理矢理でございます。と、いうか、何故レインボーブリッジを封鎖しなければならず、なぜ、それが困難を極めるのか? そういうミステリーとしての骨格がガタガタだったり、おどろおどろしいはずの殺人事件が、あっさり流されたり。かと思うと、どうでもいい署長の不倫疑惑がえんえん引っ張られたり。驚くべき粗雑さです。

 監督は、第一作と同じ、本広克行。本広監督は、映画版一作目以降『サトラレ』『スペーストラベラーズ』を撮って経験を積み、一作目に顕著だった画面の薄さを、ある程度解消しております。しかし、2 本の映画作品と同様の欠点があるように見えます。それは、泣かせどころがぶんぶん空回りしてしまう、という欠点です。ドラマチックなシーンに至る伏線、布石が不充分なんですね。枝葉末節をふくらませ過ぎて、伏線・布石がないがしろにされ、今ひとつ焦点の定まらない作品になっちゃってると思うのですが、いかがでしょうか。

 とはいえ、テレヴィ、第一作でおなじみの面々の、テンポ良く繰り出される会話は軽妙洒脱、色々お遊びもあり、マニアの方にはバチグンのオススメです。

(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2003-Aug-11;

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