スパイダー
少年は蜘蛛に
キスをする
ぐちょぐちょぬるぬる好きデヴィッド・クローネンバーグ監督の最新作ですが、今回は一瞬、ウナギが映るのみ、全然ぐちょぐちょぬるぬるしていないので、クローネンバーグ好きの私としては物足りませぬ。
とはいえ、クローネンバーグは、一貫して頭のおかしい人を主人公に据えてきたわけで、今回も主人公レイフ・ファインズは、頭のおかしい特殊な人として登場します。が、これまで途中から段々おかしくなっていくのがクローネンバーグ流でしたが、今回は最初から頭がおかしい人の一人称によって映画が進行、話がいきなり過去にさかのぼり、少年時代の自分を、おっさんになった自分がすぐそばで見ている、みたいな。
レイフ・ファインズの現在と過去をたんたんと描写していくタッチは滅法たんたんとしてまして、そうなりますと、例えば冒頭、駅舎に列車がすべりこみ、観客たちが降りてくるのをたんたんと映し出し、少し間が開いて、なんだかちょっと変なレイフ・ファインズが降りてくるというたんたんとした映像が素晴らしいなあ、と一人ごちるしかない。って、まだ眠くなってない最初のシーンだから鮮明に憶えてるだけでした。
そんなことはどうでもよくて、どうやらパトリック・マグラアの原作も頭のおかしい人の一人称で語られる実験的な小説だそうで、つまり、J ・G バラードの『クラッシュ』、バローズ『裸のランチ』同様、映画単品としてはバチグンに面白いわけではないですけど、「映像化不可能」と言われる小説を無理矢理映画にしてみせる、クローネンバーグ流「映画による小説解読」を楽しむべきなのかもしれません。が、原作との格闘の痕跡が稀薄なのは、クローネンバーグが監督を引き受けた時点で、すでに脚本(原作者自身による)が出来上がっていたからであろう。適当。
ともかく最後まで頭のおかしい人の妄想に終始し、結局何が言いたいのかよくわかりません。オチも「ふーん。それで?」って感じ。が、そういう(どういう?)映画と思ってみれば、面白いかも。映像はカッコいいのでオススメしておきます。特殊な人好きにもオススメ。とりあえず原作を読んでみます。上映はとっくに終わってしまいましたが、またヴィデオででも見てくださいな。
☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)
BABAOriginal: 2003-Apr-30;