容疑者
ロバート・デ・ニーロ扮するは、ニューヨークの凄腕刑事。離婚経験あり、現在独身、アパートの階下のフランシス・マクドーマンドとヨロシクやってる日々。さて事件発生、ブルックリン橋のたもとに打ち上げられた死体を調べてみれば、故郷ロングアイランドの麻薬の売人ではあーりませんか。殺人の容疑者として浮かび上がってきたのは、故郷に住む自分の息子だった! ガガーン!
原題は“City by the Sea”――かつてはニューヨークからクルマで 40 分のリゾート地として賑わったロングアイランドのことですな。現在は、寂れに寂れまくり、落ち葉が舞い散る海辺の大通り、カジノの廃墟など、メチャクチャ寂しい。繁栄から置き去りにされた街で、「自分は父親に捨てられた」と思っている息子、という設定がたいそう侘びしく、地味な作品です。なんでも実話を元にしているとか。
さてこの息子、高校時代はフットボールのクオーターバックとして活躍したものの、今やジャンキー。演じるのは『スパイダーマン』でウィレム・デフォーの息子を演じたジェームズ・フランコ。バチグンのジャンキー演技が涙を誘います。「フロリダに行くのにお金が要るんだよう。この、フットボールで優勝したときの記念の指輪を預けるから、金貸してくれよう」と、黒人ハスラーに哀願。黒人ハスラー「しゃあねえなあ、オレは質屋じゃないんだ YO !」と言いながら差し出したのは、コカインの包み。「違うよう、違うよう。オレはヤクはやめたんだよう。金が要るんだよう! 金貸してくれないなら、指輪返してくれよう、その指輪は息子にやるんだよう!」と泣きつくジェームズ・フランコ、ううう、たまりません。
一方、息子に自首を勧めるデ・ニーロの泣き顔演技も絶品。もの凄く地味な映画ですが、泣ける! 監督は、『ボーイズ・ライフ』『メンフィス・ベル』のマイケル・ケイトン・ジョーンズ。地味ではあるが、いい映画を作ってきた人ですね。『ボーイズ・ライフ』ではレオナルド・デカプリオに注目を集めさせたわけで、俳優の演技を引き出すのが巧いのかも知れません。知らん。今回も、『スパイダーマン』は何だったの? というくらい、ジェームズ・フランコがいい感じ。
うーんと、地味なアメリカ映画でも大丈夫な方にオススメです。
☆☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)
BABA Original: 2002-Jan-26;