青い春
松本大洋のいくつかの短編コミックを、『しあわせなら手をたたこう』を軸に長編として再構成。『PING PONG』よりも松本大洋らしく仕上がっていると評判です。…と紹介してみましたが、私、松本大洋氏のコミックをほとんど読んだことがありません。ガガーン!
そんなことはどうでもよくて。まず、高校の屋上の、柵の外に立つ。「ひとーーつ」のかけ声とともに、パッと手を離せば足を軸に、背中から落下を始める。パンッと手を叩いて柵につかまり、落下運動を止める。「ふたーーつ」のかけ声とともにパッと手を離して…という具合にカウントが増えるごとに難易度がどんどん高くなる通称「ベランダゲーム」。この高校では、ベランダゲームの勝者が「番長」になる伝統だそうです。
…うーん、「新世代の不良たち、それぞれの『青い春』」が宣伝コピーということは、時代設定は現代なのでしょう。となると、現代の高校には「番長」がいるのですね。むむむ。…って、ホントにおられるのでしょうか? ちなみに私、まだ「番長」というものを見たことありません。それに、仮にも番長を、こんなアホなゲームで決めるとは。あまりにも脳足りんではないでしょうか。
と、いうか、そもそもここに描かれている高校生諸君の姿に共感を感じる人がいるのかどうか。「お前ら何しに学校に来ておるのかね? あーん?」と、正論を述べる教師すら存在しない高校であり、高校生諸君が何に苛ついているのか見当がつきませぬ。
映画の舞台が、校内に限定されているのが象徴的です。高校という狭い世界がキミたちの世界のすべてであるから、どんどんと煮つまってこんなことになるのである。高校の外に目を転じれば、「番長」がどうであろうとどうでもいいこと。世の中には面白いことが一杯ですよ、ちょっと自転車に乗って小一時間走ってご覧なさい、と私は言いたい。
と、そんなことより、閉塞しまくりのこの映画の一服の清涼剤が、園芸の楽しさを伝えるマメ山田さん。素晴らしいです。出番が少なくて残念。マメ山田さん主演の映画が見てみたい。
とにかく、イライラする話の連続ですが、演出はスーパークール。とりあえず豊田利晃監督の『ポルノスター』、『アンチェイン』を見たいと思いました。オススメ。
☆☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)
BABA Original: 2002-Jan-29;