アバウト・ア・
ボーイ
父親の遺産がガバチョとあって、仕事もせず、結婚もせず、日々下らないテレヴィを見、たまにデートをする、そんな人に私はなりたい。…ではなくて、そういう無責任・お気楽な生活を送るウィル・フリーマン(ヒュー・グラント)。ひょんなことからマーカス少年と奇妙な友情を結ぶことになる。ヒュー・グラントは 38 歳の永遠のモラトリアム、大人になり切れぬヤツ。マーカス少年は、ヒッピー崩れエキセントリックな母親を持つイジメられっ子。『アバウト・ア・ボーイ』の「ボーイ」とは、マーカス少年のことであるとともに、とっちゃん坊やウィル・フリーマンのことでもあります。
浅い人間関係をもってよしとして生きてきたウィルは、マーカス少年と親交を結び、心底好きになれる女性と知り合って、「私はなんと下らない人間だつたのでせうか」と愕然とする。いままで何事かに情熱を傾けたことがなく、薄っぺらな会話しかできないことに気づいてしまう。「ウィットが効いた」「センスのある」会話は得意であるが、それは「何もしゃべっていない」のと同じ。やっぱり「苦労は買ってでもしろ」ということですな。…って、つまんないこと言ってすいません。「フリーマン」=「自由人」ですが、真に「フリー」になるためには、まず何らかの束縛から抜け出す「リバティ」を獲得する過程を経なければならないのである。適当である。
ウィルは「父性」に目覚めて人生を輝かせる意欲を獲得します。なんか、モラトリアム野郎のお話という点で、たまたまヴィデオで見た『ハイ・フィデリティ』に似てるなー、と思っていたら原作者が同じニック・ホーンビィという人でした。なるほど。
日本でも、バブルの頃にはウィル・フリーマン的ライフスタイルがもてはやされておりましたが、デフレ不況の昨今はそう消費・浪費に明け暮れてもいられぬ、というのはイギリスでも似たようなものか? 知らん。
そんなことより、「『ブリジット・ジョーンズの日記』の男性版」などと呼ばれているようですが、ブリジット・ジョーンズの「今年こそ 10 キロやせる」「素敵な彼氏を見つける」ことに狂奔し、「ウィット」「センス」を優先する消費型ライフスタイルを批判した地点に『アバウト・ア・ボーイ』が位置しているのである。『ブリジット・ジョーンズ〜』があまり面白くなかった方にもオススメです。
☆☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)
BABA Original: 2002-Jan-16;