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 Movie Review 2002・10月11日(FRI.)

宣戦布告

 国籍不明の潜水艦が日本海沿岸に座礁。どうやら特殊工作員・ゲリラ部隊が敦賀半島に侵入したらしい。RPG 携行式対戦車砲みたいな重火器で武装しているというから、もうたいへん。警視庁特殊急襲部隊 SAT が出動するも、現場の判断で発砲できないとあっては歯が立たず。ときの首相・諸橋揆一郎(林隆三)は、ついに自衛隊出動を決断。それは、対外的には「宣戦布告」と受け取られ、世界全面戦争の破局へと連鎖していくのであった…。ババーン!

 と、日朝国交正常化交渉が開始された今となっては盛り上がりに欠けますが、日本映画には珍しい政治サスペンスで、いざ有事の際にどのような事態が予想されるか? をシミュレートして、「政治映画」の魅力炸裂であります。製作費 7 億円ということで、微妙に苦しいシーンもありますが、憲法で軍隊を持つことが禁じられていながら、自衛隊を持つ日本という国の奇妙さが鋭く露わとなった傑作であります。よその国はよく知りませんが。

 自衛隊が出動、侵入したゲリラ部隊と戦闘が開始されますが、自衛隊は、「手榴弾を使用していいですか?!」「バルカン砲の使用キボンヌ!」…と、首相官邸危機管理センターに、いちいちお伺いを立てなければならないのですね。危機管理センターには六法全書片手の法律学者がおり、「ふーむ、このケースでは憲法上、手榴弾使用は認められませんなー、いや、私ではなく憲法が禁じているのです」と具申する、という、ブラックジョークまがい、不条理感が漂って爆笑です。

「むむむ、北朝鮮(映画では架空の国)が攻めてきても、自衛隊が自由に戦闘できないとあっては、やはり有事法制は必要ですな!」…とついつい思ってしまうのですが、ここで浮き彫りになっているのは、憲法と自衛隊の対立。自衛隊の存在が「憲法違反」であることが明解になっている。自衛隊が、本来の活動=戦闘を開始すると、ことごとく憲法とぶつかってしまう。ここまで自衛隊の憲法違反の性格を描いた映画があったでしょうか?

 また、普通、山中に潜むゲリラの掃討を行うならば、狙撃や地雷、ブービートラップに気をつけるべきだと思うのですが、自衛隊はそれを考慮していない。さらに、自衛隊員が胸から血を流して倒れるシーンから、彼らは防弾チョッキを着用していないことがわかる。バッタバッタと自衛隊員が倒されますが、それは自衛隊の作戦自体があまりにもお粗末だからで、「有事法制が整備されていないから」「現場の判断が制限されているから」以前の問題ではないか? …と思ったのですが、如何?

 リアルにシミュレーションしてみたら、「有事法制は必要である」というよりも、「自衛隊は憲法違反である」「自衛隊は実戦に弱すぎる」という印象ばかりが残るのであった。

 ともかく、どうなることかと思いましたが、よくやった! 感動した! バチグンのオススメ。

☆☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2002-Jan-11;

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