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 Movie Review 2002・11月15日(FRI.)

A2

公式サイト: http://www.jdox.com/

『A』の続編は撮らないと公言していた森達也監督が、状況は何も変わっていない、むしろ悪くなっている、と再びオウム真理教内部からカメラを回してみると、『A』以上に滑稽な茶番の数々を目の当たりにすることになる。

 オウム信者と、退去を求める周辺住民の対立が激しくなっている、というのがマスコミ上の図式ですが、実際現場に行ってみれば、信者と住民が和気あいあいと交流を持っているところが中にはあって、しかしそういう交流の風景はマスコミでは決して報道されず、住民も「いかにマスコミが偏った報道をしているか、身に染みた」と言う始末。

 オウム信者は修行を通じ、性欲・食欲などの欲望を捨てようとしており、是非はともかく一生懸命に日々を生きているのは確かでしょう。周辺住民(中年/老人)にしてみれば、「今どき珍しい、ストイックな、真面目な、気骨のある、自分の考えもハッキリしている若者」と映る。また、オウム施設を監視する運動を通じて、普段は没交渉な住民同士の交流も生まれ、むしろオウムに感謝している風にも見受けられたりする。翻って、信者との交流なんてもっての他、話しあいの余地なし! と、キチンと(?)退去を求める運動をしているところもありますが、そういう住民運動って気持ち悪いなあ、なんか宗教みたい、と思えてきます。うーむ。

 森監督自身は、「もし今、尊師がサリンをまけと言ったら、あなたはまきますか?」と信者に鋭い質問を浴びせ、信者から「…はい」との答えを引き出す、という具合に、オウムに肩入れしないスタンスは前作と共通してますが、何の注釈を加えずとも、黙々とヘッドギアをつけて座禅を組むオウム信者は滑稽であるし、ぎゃあぎゃあ騒ぐ住民運動も滑稽に見えてくる。

 右翼のデモ行進シーン。右翼はデモ前に「私たちが求めるのはオウム退去ではない。退去させても、また別の街で同じことの繰り返しになる。被害者補償を求めるデモである」と申し合わせています。それなのにマスコミ報道では「右翼がオウム退去を求めてデモ」と報道されてしまう。どうにもこうにも、右翼も、オウム信者も滑稽、マスコミも滑稽、地域住民も滑稽。一億総滑稽化が進んでおりますね。

 オウムの現幹部が、松本サリン事件であらぬ罪をかぶせられた河野善行さんに「謝罪」に出向いた場面。河野さんは「謝罪するなら勝手にすればいい、謝罪を受けるつもりはない」というスタンスで一貫しているのですが、いざ「謝罪」する場で、オウム幹部たちは「どう謝罪するか」を巡ってアレコレ議論を始めてしまう。うーん、そんなもん事前に内部で話しあっておかなければならんのでは? オウム幹部の幼児性が露わになる場面ですが、そのとき、オウム幹部、河野さん、そして取材に来ていたマスコミの間で、「この場でどんな絵を収めるか」と打ち合わせを始めるんですな。滑稽な茶番。他にも、「オウム教団施設から、衰弱した信者を警察が保護」というニュースの真相など、右を向いても左を見ても、滑稽な茶番だらけです。

『A』も凄かったですが、こちらも負けず劣らずのもの凄さ。マスコミ報道に関しては、何事も裏側を読まなければならない。当事者に取材したかどうか? 現場におもむいたリアリティがあるかどうか? 常に懐疑せねばならぬ。「真実は滑稽な茶番にある」、と私は呆然と独りごちたのでした。若干事態が沈静化したためか、森監督のクールさが増しており、私は『A』よりも面白かったです。バチグンのオススメ。

☆☆☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2002-Nov-15;

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