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 Movie Review 2002・6月28日(FRI.)

マジェスティック

 チャールズ・ブロンソンがショットガンをぶっ放しまくるスイカ畑農夫を演じるリチャード・フライシャー監督痛快作『マジェスティック』がジム・キャリー主演で堂々のリメイク! ダダーン! …とボケをかまそうと思いましたが、すでに「映画秘宝」好評連載中のファビュラス・バーカー・ボーイズ「裁くのは俺たちだ!」で、カマされ済みでした。ガックリ。

 それはさておき、1950 年代ハリウッド。ようやく脚本家としてのキャリアをスタートさせ順風満帆なジム・キャリー。ところが「赤狩り」のターゲットとなってお先真っ暗、ヤケのヤンパチ酔っぱらい運転、川に転落、記憶をなくして海辺スモールタウンに流れ着きます。そこは、第二次大戦で多くの若者を喪い、ジジイとババアと未亡人がひっそりと暮らす希望の消えた街。さて、ジム・キャリー、出征したまま行方不明中の街の英雄ルークにうり二つ! なんたる偶然、まるで映画です。

 ルークの父親マーティン・ランドー(『エドウッド』のボリス・カーロフ役の人)は、「おお! ルークじゃルークじゃ、ルークが帰ってきた! うえええーん」と大喜び。街に「希望」が甦ります。ジム・キャリーは違和感を感じつつもすっかりルークになりきるのですが…というお話。

 監督はデビュー作『ショーシャンクの空に』でただごとではない感動演出力を見せ、「天才ダラボン」と呼ばれたフランク・ダラボン。2 作目の『グリーンマイル』は長くてグッスリ寝られるのだけが取り柄でしたが、今回は最高にウェルメイドかつ御都合主義的な脚本を得、ジム・キャリーも偽善者を演じさせたら天下一品! なんとも気色の悪い政治映画となっております。

 マーティン・ランドー親父は閉館中の映画館「マジェスティック座」経営者で自慢の息子が戻って大喜び、調子に乗って映画館再建を決意します。「マジェスティック座」とはアメリカ映画の象徴なんですね。この映画は、瀕死のアメリカ映画が活気を取り戻すには何が必要か? を示そうとしています。

 かつてアメリカ映画のスターは「神」であり、映画館は娯楽の殿堂。黄金時代のアメリカ映画に「赤狩り」は深い傷を残したわけですが、さてアメリカ映画再建のためには「赤狩り」の過去をいったん忘れ、アメリカ人は希望をもって地域コミュニティを再建せねばならぬ。コミュニティを束ねるイデオロギーは、「第二次大戦はアメリカにとって完全なる正義の戦いであった」「アメリカ民主主義は健在であり、常に最大に尊重されてきたのだ」……と、いうもの。善良なるアメリカ市民は「赤狩り」に荷担したことはなく、常に思想・信条・表現・結社の自由を尊重してきたのだ、アメリカ人が自信を取り戻してこそ、アメリカ映画は甦るのである、と。

「赤狩り」の協力者として、ハリウッド左翼から「裏切り者」「コイツだけは許さん」と言われてきたエリア・カザンがアカデミー名誉賞を受ける、など「赤狩り」を過去の不幸な出来事として精算しようとの動きが盛んなようですが(ホント?)、この『マジェスティック』もその流れに沿う一本(カザン監督作『欲望という名の電車』が「マジェスティック座」で上映されるのに注目)、アメリカプロパガンダ映画の見事な再生、感服つかまつった、というか、開いた口がふさがりません。

 作者が意図したかどうなのか、同時にアメリカ映画再生の不可能性があぶり出されております。映画の中で、街の人びとは、ヒーローが偽物であることに気がついているのですね。『一九八四年』でも描かれた「二重思考(ダブル・シンキング)」ってヤツでしょうか。9 ・11 同時多発テロ報道の過程で、アメリカでは多くの英雄が生まれたようですが、アメリカ人の多数は、それがメディアによる捏造であることに薄々気がついている。

 最早、アメリカ映画はアメリカ人コミュニティ維持のための巨大なホームムーヴィーでしかなく、世界にアメリカの正義をプロパガンダし続けた力は持ち得ない。「素晴らしいアメリカ」が謡い上げられる程に、ハリウッドの死がますます明らかになるのであった。ババーン。適当です。

 ま、そんなことはどうでもよく、アメリカ映画、特にフランク・キャプラあたりのクラシック好きな方は大感動できるのではないでしょうか。2 時間 33 分の長尺ですが、アッという間の演出・脚本の巧さはバチグン、私も泣いちゃったんですけどね。はは。エンド・クレジットをジックリ見ると、色々カメオ出演されてるようですのでお見逃し(お聞き逃し)なく。オススメ。

☆☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2002-Jun-28;

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