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 Movie Review 2002・6月13日(THU.)

愛しのローズマリー

『キングピン ストライクへの道』『メリーに首ったけ』『ふたりの男とひとりの女』と傑作連発のファレリー兄弟監督新作。ファレリー兄弟といえば危ない身障者ネタを含むラジカルなギャグ連発なのですが、今回は笑わせつつも思いっきり泣かせる、という新境地を開いております。

 主人公ハル(ジャック・ブラック)は父親の遺言「女性は見た目がイチバン!」を信条に、果敢に「見た目美女」にアタックをかける日々。友人も「お前は基本的にイイヤツだし仕事もできるが、女性を見た目でしか判断しないのはいかがなものか?」と忠告するも聞く耳持たず。ところが精神療法カウンセラーの治療の結果、人の内面が外面として見えてしまうようになってさあ大変。道で偶然出会った女性、体重 136 キロなんですが、ボランティア活動に励む美しい心の持ち主なので、ハルの目には「スリムな美女」グウィネス・パルトロウに見えてしまう、というわけ。

 ハルの目には美女、他の者には非美女に見える、そのギャップによるギャグの数々が繰り出された後、ハルは人間にとっていちばん大切なものは何かを悟る…という、お約束の展開なんですが、これが泣ける! …のは、この映画がひとつの真理を描き出しているからなのですね。

 それは、スーパーモデルを美しいと感じるのは、多分にメディアによって操作された結果なのである。我々は今こそ資本主義の洗脳を脱し、真の「美」を見出さねばならぬ、ちゅうことであります。「人間はいかに他人と違う世界を見ているか?」との脳の働きに関する鋭い洞察のもと、人間の「美」とは何か? という哲学的な問いを発しております。ファレリー兄弟は、かつてのアメリカ映画が持っていた「倫理」=心の美をもって尊しとする「偉大な魂」の復興を試みているのですね。

 そう、ファレリー兄弟にはフランク・キャプラ、エルンスト・ルビッチュなど、アメリカン・クラシックの監督たちの伝統が脈々と息づいているのである。ババーン! 

 そんなことはどうでもよく、「キミはなんてスリムで美しいんだ!」と称えられるたびに困惑の表情を浮かべるグウィネス・パルトロウ、圧倒的に素晴らしいです。超キュート。136 キロの女性の動きを模倣する動作もコッソリといい感じ。バカ過ぎファレリー兄弟を期待すると外すかもしれませんが、エロい美女もワンサカ登場しますのでなかなかにオススメ。

☆☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2002-Jun-13;

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