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 Movie Review 2002・6月12日(WED.)

ザ・ワン

公式サイト: http://one.eigafan.com/

 そもそもクンフーとは、武器を持つことが禁じられた華僑たちが自衛のために、己の身体や身近な道具で圧政者と戦うための、門外不出の武術だったそうです。かつてブルース・リーが白人対象の道場を開いたとき、中国人老師に「そんなことしたらいかん」とたしなめられたのは有名な話(ですか?)

 そして、クンフー映画は、鍛え抜かれたワザと肉体・命知らずのスタントで、超大作主義のアメリカ映画支配に敢然とたち向かっているのですね。ところが 90 年代後半、ハリウッドは、アメリカ製超大作アクションより、ずっとお安く作られているジャッキー・チェン作品の方が全然面白いことにようやく気づき、『マトリックス』『チャーリーズ・エンジェル』など着々とクンフー取り込み作戦を開始します。

 すなわち、「ジェット・リーのハリウッド進出第 4 作」とは、ハリウッドによるジェット・リー取り込み第 4 弾でもあるわけで。第 1 作『リーサル・ウェポン 4』でジェット・リーは冷酷非情のクンフーの達人役、メル・ギブソン+ダニー・グローバーと戦ったわけですが、どうみてもジェット・リーのコンマ 5 秒、秒殺勝ちやろ? とツッコミたくなる不可思議さ。これではいかん。よし次はロマンスや! と『ロミオ・マスト・ダイ』、うーん次はリュック・ベッソンや! と『キス・オブ・ザ・ドラゴン』、と試行錯誤をくり返します。

 そして、ジェット・リーを活かすも殺すもアクション次第、それには敵役を強くしなければならないとの正しい認識に達したハリウッドはついに、「ジェット・リーより強そうなヤツはおらん。せやったらジェット・リー自身と戦わせたらええんちゃう?」と多次元宇宙の 125 人ジェット・リーによるバトル・ロワイアルを思いつきました。ワクワクです。さすが圧倒的な消化力を誇るハリウッド、ついにジェット・リーもアメリカ映画に取り込まれてしまうのか? ダダーン!

 ところが、バトル・ロワイアルといってもすでに 122 人は死んでしまったところから物語が始まるのでまずガッカリ。次に、惜しげもなく CG をバンバン使ってジェット・リーのとんでもない強さを表現しようとしているのですがね、これではダメなんですよ。CG を使えば使うほどジェット・リーのアクションが普通に思えてくる。

 ジェット・リー同士を戦わせることを思いついたまでは良いのですが、そうすると CG を駆使せざるを得ず、クンフー映画の面白さはハラハラとこぼれ落ちていくばかりなり。いかなハリウッドといえど、ジェット・リーを使いこなすのは無理。…ていうか、ジェット・リー、香港映画に出てくれ! 思えば香港製クンフー映画でスタントマンが命がけなのは、そうでもしないとハリウッド映画に勝てないとの思い、「アンチ・ハリウッドの気概」があるからなのですね。真のクンフー映画は決してハリウッドでは製作できないのだ。ババーン!

 そんなことはどうでもよく、部分的に「おお! さすがリンチェイ!」と思わずスタンディング・オベーションしてしまうアクションもありますのでオススメ。

☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2002-Jun-12;

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