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 Movie Review 2002・1月4日(FRI.)

バニラ・スカイ

 クールな傑作スペイン映画『オープン・ユア・アイズ』(アレハンドロ・アメナーバル監督)を、キャメロン・クロウ監督+トム・クルーズがリメイク。

 キャメロン・クロウ監督といえば『あの頃ペニー・レインと』が公開されたばかり。ビリー・ワイルダーのひそみに習って綿密に脚本を練り上げるので新作がなかなか来ない C ・クロウにしては素早い! ふーむさてはギャラ目当ての職人仕事か? と邪推したモノの、出来上がったのは見事にキャメロン・クロウ・タッチが横溢、好き者にはこたえられまへん。物語の骨格は『オープン・ユア・アイズ』とほぼ同様、おまけにヒロインを演じるペネロペ・クルスまで同じ、しかし見終わった印象が全く違う。なんか凄いですな。映画の神(精神)はディテイルに宿る、ってことで。

 主人公トム・クルーズは 33 歳・親の遺した大出版社のオーナー、大金持ちかつ男前、フェラーリを乗り回し、セフレ(=セックス・フレンド。英語では“fuck buddy”というらしい)はキャメロン・ディアス…と、とことん嫌なヤツ。友達が誕生日パーティに連れてきたガールフレンド=ペネロペ・クルスに一目惚れ、好き者のトム君、早速アタック開始! しかし…という話、ってよくわかりませんが、二転三転四転五転……n 転(n は 2 より大きい自然数)するストーリー展開がお楽しみですので真っさらな気分でご鑑賞ください。

 で、オリジナル版は、P・K・ディックっぽくてバチグンに面白いけど後味が悪かったんですな。ところが『バニラ・スカイ』、キャメロン・クロウお得意のロックンロール趣味が加わり、色んな映画の引用もあったりのキャラメル味シュガーコーティング。しかしながら込められたのは「夢の世界は甘いが、オレはあえてチビシイ現実を生きる!」ちゅうメッセージでして、辛党の方にもオススメかも? 知らん。

 主人公に対する印象も、オリジナル版では最後まで嫌なヤツなんですが、キャメロン+クルーズ版では、「いや、金持ちの男前ですけどね、ワシかて好きこのんでそう生まれついたんじゃないよ、ホントは愛ある人生を望んでるんだよ」みたいな風情が立ち現れているし、キャメロン・クロウ作品全てに共通する「主人公の成長物語」となっていて、後味爽やかなのであります。同じ話なのに。オリジナルでは「うひゃ、恐ひ!」ってなシーンもキャメロン・クロウ+トム・クルーズになると、ペーソス溢れて微笑ましかったりするのですな。

 オリジナルを観ている者としては、延々と二転三転四転五転……n 転(n は 2 より大きい自然数)するのが、しつこくて飽きないでもないですが、こう、ロックンロールの名曲がさりげなく流れてくるキャメロン・クロウタッチが気色良く、ペネロペ・クルスがこれまた可愛いし、CG によるモネの描いた空=ヴァニラ・スカイの再現とか、カッコいい映像もあり、お正月のオススメはコレに決まり。

 ですが、過去の『セイ・エニシング』『シングルズ』『ザ・エージェント』『あの頃ペニー・レインと』に比べると、オリジナル脚本でないからかバチグンの語り口の巧さばかりが目立つかしら? 地に足が着いてない感じ? やっぱりキャメロン・クロウはオリジナルで頑張ってくれ! と私は思うのでした。が、『ハリー・ポッターと賢者の石』の 1 億倍オススメです。

BABA Original: 2002-Jan-04;

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