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 Movie Review 2002・2月5日(TUE.)

アメリ

 パリーはモンマルトルのカフェーの女給・アメリ(オドレイ・トトゥ)は 22 歳「不思議ちゃん」。ある日、「人々をほんの少し幸福にすることこそ我が人生」と悟り、カフェーや下宿周辺の人々に善意、というか余計なお節介を施していきます。

 そんな不思議ちゃんもやっぱりステディが欲しい、おっとそこへ変な趣味のマチュー・カソヴィッツが現れ。マチューは遊園地のお化け屋敷とポルノショップでバイトしつつ、3 分間写真コレクション(これって考現学)にいそしむ謎のお兄ちゃんです。アメリは彼こそ理想のステディだわ、しかし夢想家、すなわちリアルワールド苦手のアメリにとって告白するなんてもってのほか、なんとも回りくどいというか、逝っちゃってるというか、ぁゃιぃ恋愛大作戦、というかストーカー行為が始まります。

 アメリを筆頭に、登場人物は夢想家だらけなんですが、アメリがすったもんだの末にポルノショップ店員マチューに告白するまでを描き、要は、「夢想は人生をビューティフルにするけど、いざというときはリアルワールドに飛び出さんとダメだぞ」との教訓を描こうとしております。

 アメリと同じ下宿に住む老人が言います。

「人生はツール・ド・フランスだ。レースのほとんどは集団の中でジッと時期を待つ。それは途方もなく長い時間だ。だが、ゴールが近づいたら一気に集団を飛び出し猛スプリントをかけなければならない。」(多分に字幕を捏造)

 …す、素晴らしい! そうか、我々(誰)がロードレースに圧倒的な魅力を見出すのは、ロードレースが人生そのものだからなのですね。人生を豊かにする映像として、1997 年ツール・ド・フランスがほんの一瞬映し出され、これがまたバチグンの美しさ! やはり、自転車こそ映画にもっとも愛された乗り物である! と私は確信を抱いたのでした。この一瞬、『アメリ』はフランス映画史上最高の映像を持つ作品となった。

 そういう最高の映像を持ちつつ、いや、様々な可愛いアイテムがぶち込まれ、デジタル処理を施した映像はそこだけ切り取れば見どころ満載なんですが、どうにもこうにも面白くないんですね。

 広角レンズを使っての奇天烈なカメラワーク、色彩を歪ませ、映画全体を幻想的に仕上げておりますが、どうか? ミュージック・ヴィデオとか、5 分くらいの短編映画なら良いんですけど、延々と続くのは辛いんですわ。年寄りには。一本調子なのですね。『仄暗い水の底より』の緩急自在ぶりが懐かしいです。

 映画全体をファンタスティックな雰囲気が覆い、アメリの幻想と現実の渾然一体ぶりを描こうとの試みでしょうが、結局、映画全体が「幻想」と化し、すべては夢の世界の出来事、リアルワールドはどこにも存在しないのですね。結局アメリはリアルワールドへ飛び出していないのでは? この映画のハッピーエンドは、さながら『トータル・リコール』、または『スターシップ・トルーパーズ』(ともにポール・ヴァーホーヴェン監督作品)のようで、永遠に夢を見続けることの恐ろしさを私は見て取って慄然としたのでした。このラストは恐いですね。ホントに。

『仄暗い水の底より』が余り恐くなかった、という方にオススメです。

BABA Original: 2002-Feb-05;

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