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Movie Review 5月6日(SUN.)

走れ! イチロー

 今やメジャーリーグで大活躍のイチロー選手に「走れ!」と命令するとは、たかが映画の分際で何様のつもりであろうか? と憤懣やるかたなく劇場に乗り込んだのですが、走っていたのは中村雅俊だった! がーん。

 ポスターではイチロー選手が前面にフィーチャーされておりますが、ニュース映像の断片が挿入される程度の扱いでした。メインは中村雅俊演じるところのリストラされ失業中の「石川市郎」さん、石原良純扮する「奥手川伊知郎」さん、松田龍平演じる球場のコロッケ売りにて役名は「望月リュウ」なんだけど、受験に失敗した「一浪」さん達の物語でして、「うーむ、この騙しっぷりは、イチロー選手目当てのお客さんは怒るだろうなあ、嗚呼、イチローファンでなくて良かった!」と、私はホッと胸を撫で下ろしつつ、映画がそもそも見せ物小屋の出自を持つことに思いを馳せ呆然と感動したのでした。

 監督は「映画好き」が高じて映画監督になってしまった大森一樹、脚本は松田優作主演作のいくつかでお馴染み丸山昇一、複数の主人公が少しずつ関わりを持ちながらそれぞれの物語を語っていく、とは、おお、『マグノリア』のノリや。企画はなんとも脱力感漂うのですが、映画は「映画好き」の意気込み溢れたなかなかの力作であります。

『マグノリア』は大勢の人々が小ネタを語り、中心にはただ空虚があった、という印象ですが、『走れ! イチロー』にはしっかりと中身があります。それは「神戸」という街なんですね。全面的に神戸ロケが敢行され、あの高架下、この波止場など見覚えのある風景を舞台に、大都市が失ってしまったコミュニティが存在する街「神戸」が描かれます。イチロー選手は、その象徴的存在という扱いなんですね。

 神戸は阪神・淡路大震災でボランティアの方々が大挙として押し寄せ、新たなコミュニティを生み出し定着させ、すっかり「ふれあいタウン」「ヒューマン・ネットワーク・シティ」になっているようです。いやあ、神戸最高! …ですね。わはは。

 登場人物が矢鱈と多いのですが、『バトル・ロワイアル』でも好演の柴咲コウ、山本太郎がチョイ役なれどたいそうよろしく、中村雅俊の娘役の笹岡莉紗ちゃんもバチグンの名演。イチロー選手のファンでない方にオススメです。

BABA Original: 2001-May-06;

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