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Movie Review 7月25日(WED.)

PLANET
 OF THE APES
 猿の惑星

『猿の惑星』(1967 年)のリメイク。原作:ピエール・ブールは『戦場にかける橋』の原作者でもあり、第二次大戦中日本軍の捕虜となって日本兵に小突き回された経験があるそうで、すなわち『猿の惑星』の猿とはイエローモンキー=日本人のことなのですね。

 奇しくも『パール・ハーバー』も公開中であり、アメリカのイメージ戦略機関であるハリウッドは反日キャンペーンに夢中のようです。今回ティム・バートン版では、美術などにジャポニズム趣味が溢れ、「これって日本じゃん!」と気付かれる方も多いのではないでしょうか。きっちりイメージとして描かないと、ピンと来ないボンクラが増えた、ということですかね。

『パール・ハーバー』の、野原でのノボリを立てての軍議は、黒澤明監督の『影武者』『乱』を連想させましたが、『猿の惑星』の猿軍団もまさにソレ風です。欧米人が日本に対して抱くイメージ形成に、黒澤明が大きな役割を果たしたことが伺えます。こうなったら我々は日常から武士ファッションに身を包んで、イメージのギャップを埋める努力することが国際平和にとって重要なのではないでしょうか。知らん。

 そんな話はどうでもよくて、日本猿観客は、主人公である人間に感情移入すべきか、お猿さんに感情移入すべきか大いにとまどうところでしょう。おまけに主人公、マーク・ウォールバーグが見事な猿顔で、混乱に拍車がかかっております。聞けば当初マット・デイモン主演で製作発表されていたようで、交代の理由は定かではありませんが、主演=猿顔は、はずせなかったようですね。猿→日本人は、如何に人間の真似をしようと所詮猿だが、西洋人は、顔は猿でも人間なのだ、そこんとこヨロシク、ということでしょうか。ここで一句。メイクした 猿より猿顔 ウォールバーグ。

 リメイクと言っても、「猿→日本人が支配する世界に、欧米人が闖入する」というアイデアだけ頂いて、ストーリーはまったく別物になっております。人間が原子力パワーで猿軍団を撃滅するなど、日米関係の寓意に満ちたお話しとなっております。『猿の惑星』といえば驚愕のラスト、なんですが、今回も少々脱力気味のビックリが用意されており、『トワイライト・ゾーン』っぽくてワタクシ的にはオッケーです。

 主人公がナード(おたく)でなく、ティム・バートンらしさは何処に? ティム・バートンの魂(ソウル)が余り感じられないのですが、今回は企画モノの雇われ監督に徹し、ギャラをガッポと稼いでそのうち好きな題材で撮らせてもらうぜ、というところでしょうか。しかし衣装やセット、画面作りには美意識が貫かれ、見応えは充分です。

 更に、素晴らしいのは、猿がホントに猿なところです。1967 年版では、猿と言っても動作などは人間そのものだったのですが、今回は見事に猿です。猿メイク担当はリック・ベイカー。猿メイク道 30 年の第一人者です(第二人者がいるかどうかは不明)。猿最高! 猿が支配する世界の不条理感が横溢します。そんな猿っぽい猿(日本人)が、お化粧をしたり、ワキガに気をつかったりの猿マネをするものですから、きっと欧米の方々が見れば大爆笑巨編なのでしょうね。笑っていただければ幸いです。

 日本人が猿であることを再確認させようという企画意図なのですが、ティム・バートン、リック・ベイカーの起用で、猿軍団が無闇にカッコ良くなってしまったのはちょっとした誤算でしょう。猿メイクのティム・ロス演じるセード将軍最高です。

 また 1967 年版主演のチャールトン・ヘストンが猿メイクでちょっとだけ登場するのも見どころ…って猿メイクなので見逃しがちなのですが、全米ライフル協会会長らしく、ピストルの危険性を説くのは爆笑モノです(全米ライフル協会は、各家庭にライフルを常備せよ、と主張しているのであって、隠し持てるピストルには反対)。その他愉快なシーン多数、何と言っても欧米人が日本人をどう見ているのか得心できますのでオススメです。猿で悪うござんした!

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BABA
Original: 2001-Jul-25;

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