劇場版 ポケットモンスター
セレビィ
時を越えた遭遇(であい)
劇場版シリーズも第 4 作となり、お話し、演出など随分とこなれ、安心して見られる作品となっています。毎回、新ポケモンが登場してチビッコたちも大喜びなのですが、今回は森の守り神にして「時わたり」能力を持つセレビィが登場。木の実を食べて「むっきょきょー」と喜ぶ姿は、誰しも「か、かわいい…!」と思わず微笑みがこぼれるのではないでしょうか。
毎回、人間の身勝手がポケモンの暴走を引き起こし、主人公サトシ少年の真心が心に傷を負ったポケモンを癒して目出度し目出度しというパターンですが、今回もほぼ同様。『もののけ姫』を思わせる自然環境問題と、タイムトラベルというのがネタ的に新しいところです。
『もののけ姫』は、アニメに付き物の「勧善懲悪」パターンを壊してしまっていたので、爽快な結末とは言えなかったのですが、ポケモンの場合は、ロケット団→ポケモンを人間の道具と見なす悪者、サトシ一派→人間とポケモンは対等のパートナーとする善玉、というクラシックな図式で、「いやっほー! ボクもポケモンマスターを目指すぜ!」と足取りも軽く劇場を後に出来るのではないでしょうか。
しかし、パターンに嵌りすぎていて物足りないのも事実です。少年を主人公にする場合、少年は何かを必ず学ばなければならないのですが、果たしてサトシ少年は今回の騒動で何を学んだか? どういう成長を遂げたのか? 成長を促すべき主人公が陥る苦境が生ぬるいのですね。少々残念であります。また、タイムトラベルネタも、ヒネリなしにてなんだかナーであります。それにピカチュウがほとんど活躍しないのもどうかと思いますよ。
とはいえ、暴走するセレビィの禍々しい造型は、コンピュータグラフィックスも駆使してなかなか素晴らしいですし、伝説のポケモン「スイクン」も見逃せないのは確か。
この夏、『パール・ハーバー』の 100 億倍は爽やかな気分を満喫できるのでオススメです。そう、日本が世界に輸出する映画はこんなにも愛と勇気と希望に満ちた穏やかなものなのです。『パール・ハーバー』はディズニー傘下のタッチストーン製作ですが、あんな好戦的な映画を作っていて恥ずかしくないのでしょうか。ディズニー許さん! ポケモン最高!
同時上映『ピカチュウのドキドキかくれんぼ』も、随所にスティーブン・キングの影響が見受けられる好短編。オススメです。
BABA Original: 2001-Jul-19;