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Movie Review 2月22日(THU.)

回路

 新作を連発する黒沢清、入魂の一作。かつて『スイートホーム』で大コケした恨みを晴らすべく満を持してのメジャー系列での公開。待てば回路の日和あり。

 海外にて評価が高い日本の監督といえば世界一のバイオレンス監督=北野武だが、黒沢清はさしずめ世界一のホラー監督。近年、和製ホラー映画が陸続と作られており、これまで見た中では『女優霊』『リング』の中田秀夫がいちばん恐いと思うていたが、今回の『回路』、いい線逝っております。

 といいつつ、ボクは実はホラーがあまり恐くない、というのもどこかで「所詮、映画じゃん」、科学という方法は万能なのだと思っているからで、科学的に見てヘンテコな描写があったりすると、恐怖感は消え、恐がらせようとすればするほど、うははははと爆笑してしまって場内の顰蹙を買うこともしばしば。しかし今度の黒沢清はなかなかに恐い。夢に見そう。見ませんでしたが。

 何が恐いといって、エンドタイトルに流れる Cocco さんの「主題歌」が最強の恐さ! 思わず劇場をほうほうの体で逃げ出した。2 時間近くかけて作り上げられた黙示録的世界(何)が木っ端みじんに砕け散る。「心霊よりも生きている人間の方が恐い」とはよく言われるが、雰囲気にまったくそぐわない楽曲を流してしまう無神経さには心底からの恐怖を覚えた。と、いうことでこれから見る人はエンドタイトルが始まったら即座に席を立つべし。心臓マヒを起こしても知りませぬよ。うひ。

 どうでもいい話はおいといて。さて、今回の黒沢清もワケわかんなさ全開。身近な人が、ふとアッチ側に逝っちゃって、戻ってきたと思ったらやっぱり戻っていなかった、というのは恐い。いるはずの人がいなかったり、いないはずの人がいたり、捕まえられるはずのないものが捕まえられたり、と、いちいち意表をつかれるのが、気持ちよろしい。恐怖もまた快楽。理詰めで怪異を説明せんとすれば恐怖は消滅していくものだが、ドンと「恐いイメージ」を提示、説明なし。こうなると科学的アプローチはお手上げなのであった。とはいいつつ、生涯もっとも恐かった映画=『震える舌』(野村芳太郎監督)を超える恐さではなかったんですけど。インターネットをネタにしているあたりも脱力気味にて一服つける。

 独特のグラフィック感覚が炸裂、気色悪さがにじみ出る美品。恐がりの方も、がんばって耐えてこの美しさを堪能してください。オススメ。

BABA Original: 2001-Feb-22;

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