ハート・オブ・ウーマン
…とは、よくわからない題名だが、…ってこんな書き出しばかりの気もするが、原題は“What Woman Want”=「女性が望むもの」。メル・ギブソンは女心が分からないことにかけては全米一の、広告代理店のアート・ディレクター。
メルギブが勤める大手広告代理店は、タバコや酒のコマーシャルに水着の美女を登場させて大いに売り上げを伸ばしていたが、かつての面影なし。今や、お金を持っているのは女性で、女性をターゲットにした商品・広告でないとダメ、ということで、BBDO で活躍していた女性 AD(アート・ディレクターをこう略するらしい)ヘレン・ハントをヘッドハンティングしてチーフ AD の座に据える。
チーフ AD の座を狙っていたメルギブにとっては面白くないことはなはだしく、酔っぱらってムダ毛取りしたりマニキュア塗ったりしているうちに(わけわかりませんが、見ればわかる)、すってん転んじゃって、一転、女性の心の声が聞けるようになってしまったのだ。ってのは比喩ではなくて、本当に心の声が、耳に聞こえてくるようになってしまったのだ。やれやれ。
オーストラリア出身、田舎者の役が似合うメルギブが、(一見)ハイ・センスが要求されるところの広告マンとは、それだけで抱腹絶倒なのだが、これがなかなか、ダンスも披露したりと頑張っている。ふざけた設定だが、フェミニズム勃興に閉口する男のうっぷん払い、という側面を持つ。アメリカでは男性の「ああ、もし女性の心の中が覗けたらなあ」という欲望が一本の映画を生み出すまでに肥大化しているのであった。やれやれ。
『ファイト・クラブ』や現在公開中の某映画など、「男らしさ」「男性の地位」を考察するアメリカ映画がポツポツあるが、これまで女性・子供を見下すことによって成立していたアメリカン・マッチョが存在の危機を迎えているのだ。地位を見失った男たちは、真の「男」的なるものを見出していくのであった。しかし、この映画での男性 VS 女性の対立は図式的だなあ、たとえ女性監督の手になるものであっても、だからどうした? と思ったり。
剣呑な間柄のメルギブと女性上司のヘレン・ハントが、やがてのっぴきならない仲になる、とはビリー・ワイルダー、エルンスト・ルビッチュなどのスクリューボール・コメディー=「艶笑喜劇」を思わせるが、「男性は、どうして女性の気持ちがわからないのか、といっても、分かり過ぎるのも考え物だ」というテーマはきわめて現代的、かつ普遍的なものだ。知らん。
というような話はどうでもよくって、カフェーのウェイトレスのお姉ちゃん役でマリサ・トメイが出ている! どうでもいいですか? とにかくメルギブの魅力炸裂、メルギブ好き必見。オススメ。
BABA Original: 2001-Feb-20;
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