青島要塞爆撃命令
1963 年東宝作品。第一次大戦、日本はドイツと闘っております。日本海軍はドイツ占領下の中国青島(チンタオ)要塞を軍艦で攻撃するも、圧倒的な射程距離を誇る「ビスマルク砲台」に阻まれ、なす術がない。起死回生の秘策として、当時誕生して間もない航空部隊に命令が下る。ババーン! 青島要塞爆撃命令!!
日本の戦争映画といえば、戦争の悲惨さを描いた暗いもの、というイメージがありますが(ないですか?)、1960 年代頃の東宝は『太平洋奇跡の作戦キスカ』『日本海大海戦』など日本男子ならばアドレナリンが吹き出まくる痛快無類の戦争映画を多数製作、この『青島要塞爆撃命令』も「『ナバロンの要塞』も目じゃないぜ!」というバチグンの面白さであります。
まず誕生間もない飛行機隊のショボさにビックラ仰天です。部隊といっても、プリミティブな複葉機が 2 機きり、パイロットもたった 5 人。演習飛行中、隊長(池辺良)命令して曰く、「2 号機の調子はどうか聞いてくれー」。加山雄三隊員応えて「わかりましたー!」…おもむろにラッパを取り出し「ぷーぷくぷー、ぷーぷくぷー、ぷーぷくぷー、ぷーぷくぷー」(メロディはうろ覚え)。2 号機には佐藤充、夏木陽介が搭乗しております。「調子はどうかと聞いておりますー!」「よーし!」…こちらもラッパを取り出して「パッパラパパッパラ、パッパラパパッパラー、パッパラパパッパラ、パッパラパパッパラー」…当時、無線通話等という気の効いた物は存在せず、ラッパで交信していたのですね。お空のツバメもビックリです。
爆撃命令を受け、日本初の航空母艦(と言っても輸送船に複葉機を積んだだけ)に乗り、航空部隊は一路、青島へ。早速、偵察も兼ねて初空襲を敢行。しかし! 投下すべき爆弾が間に合わなかった! しょうがないので敵ドイツ軍めがけて放り投げたのは…煉瓦と五寸釘です。第一次世界大戦といえば“戦車”“毒ガス”“有刺鉄線”など最新兵器が続々と誕生した時代ですから、さすがのドイツ兵もワケがわからず「ヤーパン! ヤーパン!」と大慌て。私は、空から五寸釘、煉瓦が降ってくる戦争の不条理さに慄然としつつ、余りにも牧歌的な光景に呆然と感動したのでした。
当時の海軍は「飛行機はホントに役に立つのか?」と、この新兵器に懐疑的で、青島爆撃に成功せねば、航空部隊の存続は危うし、ということでパイロットたちを先頭に熱い挑戦が始まる! …どうです、面白そうでしょ。
監督は、『ニッポン無責任時代』など無責任シリーズの古沢憲吾。時にはドタバタ喜劇の雰囲気も漂わせつつ、「もっと! もっと高く!」と、日本の高度成長期のイケイケドンドンぶりを反映して、航空部隊は企業の新製品開発のヴェンチャー部署のようであり、そう、さながら NHK 『プロジェクト X』を見るかのような面白さです。「…そのとき、国井中尉にとんでもないことが起こった…。腹痛だった…。」と、田口トモロヲのナレーションが聞こえてきそうです。
円谷英二の特撮も圧倒的な冴えを見せます。もちろん最近の CG を見慣れた目にはミニチュア然としたものですが、それでもクライマックスは思わず手に汗握ってしまいました。そう、特撮のリアリティとはミニチュアが見破られようが、そんなことは関係ないのですね。シークェンスが喚起するエモーション=感情の流れに沿う画面を如何に構築するか? が重要なのです。CG 、デジタル処理全盛の今だからこそ、圧倒的な再評価が待たれる作品です。適当。
この頃の東宝映画には欠かせない、藤田進、平田昭彦、田崎潤、左卜全らの、登場した瞬間にキャラが立つ脇役陣、加えて浜美江演じる謎の台湾娘、祭りのダンスも見もの、何と言っても当時『若大将』シリーズで人気絶頂の加山雄三のマジボケぶりが最高! ということでバチグンのオススメ。と、言ってもなかなか見る機会がないでしょうから、RCS にリクエストしてみましょう。
BABA Original: 2001-Aug-28;