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Movie Review 4月22日(SUN.)

アタック・
 ナンバー・ハーフ

 1996 年タイ国体で、メンバーのほとんどがゲイのバレーボールチームが優勝した、という実話の映画化です。

 タイではドラァグ・ショウ専門の劇場もあるそうで、ドラァグ・クイーンがそれなりの市民権を得ているようですが、何かとマッチョな資質が求められる体育会系世界ではゲイの方々は肩身の狭い思いをしています。ゲイのジュンとモンは、実力がありながらも疎外されがち。ストレートの方にしてみれば、やはり素っ裸でシャワーを浴びたり、仲間でエロ話をしたり、でチームの結束が固まるというものですから、ゲイが混じっていてははなはだやりにくいのでしょうね。

 ジュンとモンは、それならばとゲイ仲間を集めチームを作ってしまう! 見た目は女性のニューハーフの方までおられます。こんなチームが国体に出場するとは日本では考えられないことではないかしら? かつてエンゲルスでしたか「女性解放の度合いは、社会発展の尺度である」と申した、と記憶しておりますが、現代に於いては「ゲイ解放の度合い」の方が尺度として分かりやすいと思うのですね。その伝でいえば、タイは日本よりずっと進んだ国なのだなー、と私は呆然と感動したのでした。

 この映画はタイで大ヒットし、映画のファッションを真似る方々が続出、社会現象にまでなったそうです。一本の映画がゲイ開放を促進したわけですね。映画の持つ力に私は改めて感動を覚えたのでした。

 日本においてもゲイを描く映画はボチボチ増えていますが、妙に前近代的な陰湿的雰囲気がつきまといます。さもなくば、ステレオタイプの戯画化されたゲイだったり。この映画の場合、ゲイ的な楽天性、「ゲイ気質(かたぎ)」をリアルに描いており、誰もが共感できる作品になっているのではないでしょうか。

 タイ映画はあまり(ほとんど?)馴染みがないのですが、文化的には東洋と西洋のイイトコ取りをしている感じでして、録音・撮影などの映画技術も一定の水準に達しております。省略を効かせた脚本もなかなかのもの。こりゃ絶対面白くなるネタですが、見事にはまった俳優を揃え、堂々たる娯楽作に仕上げました。淀川長治先生が存命なら大絶賛されたことと思います。映画であまり見ることがないタイの風物に触れるのも、貴重な体験ですね。

 エンドタイトルでは本物の選手たちが登場し勇姿を披露しますが、これが実に良く似てる! 映画に感動し、それが実話であることに更に感動し、私は溢れる涙を禁じ得なかったのでした。『ハンニバル』の 30 億倍オススメです。

BABA Original: 2001-Apr-22;

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