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Movie Review 2000・9月24日(SUN.)

サルサ

 脚本は、『哀しみのトリスターナ』、『小間使いの日記』などルイス・ブニュエルのフランス時代の大半を手がけたジャン・クロード・カリエール。監督・脚本はジョイス・シャーマン・ブニュエル。この人はブニュエルの娘でしょうか? 知ってる人教えてください。

 生粋のフランス人である主人公は、将来を嘱望されるピアノ学生なんだが、「ホントはラテンが好きなんじゃい!」と、奨学生のイスをけって、ラテンの世界へとびこむ。知りあいのラテンバンドに加えてもらおうとするが、「はっはっは! 冗談キツいわ。白んぼがラテンやってどうする? 客はみんなチョコレート(褐色の肌ってことです)を見たがってんにゃ!」と一笑に付される。

「ラテンダンスを教える」といえば、「アホか、お前。ラテンダンスに通うフランス娘は、クバーノ(キューバ人)と寝たがってるんだぜ。」と、これまた大笑い。しからば、とキューバ人に化けていざ、ラテンの世界へ!

 なんか、白人が、黒人に化ける『ミスター・ソウルマン』(ルウ・リードが主題歌を歌ってました)みたいな話だが、『サルサ』で描かれているのは「フランス的、ヨーロッパ的なるもの」、純血を求めることのおろかさだ。「クラシック」より「サルサ」、「フランス白人」より「キューバ人」の方が美しく、すばらしいものとされる。「混血がいちばん美しいのよ」なんてセリフもあったりして。

 根底には、「白人至上主義」がヨーロッパで息を吹き返していることへの批判があるだろう(ホンマか?)。「世界で自分たちがいちばんエレガント」と信じて疑わないフランス人のボケナスぶりもちょこっと揶揄され、なかなか痛快。

 大映ドラマもビックリのストーリー展開で、生粋のフランス人と信じていた者が実は混血だった、とか、「人種観」を攪乱する脚本は、さすがのカリエール、やっぱりうまいなあ、と思うのであった。

「黒人になりたい!」とぬかす主人公が、「お前、黒人であることの苦労が分かってんのか? なめとったら承知せんぞ」とたしなめられる場面もあり、異文化理解が簡単なものではないことも描かれる。異文化理解とは、出発点は、見た目のカッコよさであこがれることだろうけど、その民族の苦しみ、悲しみを身をもって知ってこそはじめて可能である、との教訓も示される。ピシッと一本スジが通っております。

 主演はヴァンサン・ルクールって人だが、キューバ人に化けている時の方が、素より 100 万倍カッコいいぞ。ヒロイン、クリスティアンヌ・グゥは、メトロのラテン・イベント『ラティノ・コネクション』とかでぶりぶり踊っているお姉ちゃんを思わせ、ラテン好きの白人ってイケてないかも? とあらためて思ふ。オススメ。

BABA Original: 2000-Sep-24;

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