60セカンズ
80 年代はスティーヴン・スピルバーグの時代、90 年代はジェームス・キャメロンの時代。90 年代後半〜 2000 年代はジェリー・ブラッカイマーの時代。か? プロデューサーとして、『フラッシュダンス』、『ビバリーヒルズ・コップ』、最近は『ザ・ロック』、『コンエアー』、『アルマゲドン』でメガヒットを飛ばしておる。最近のアメリカ映画、特にアクション演出のつまんなさはブラッカイマーが影響を与えているからでは? と思うのだ。
ブラッカイマー製作作品の特徴は、主題歌/挿入曲山盛りで音楽業界でも話題を仕掛け、MTV 出身スタッフを積極的に起用、マネーメイキング・スターでドカンと儲ける、ヴィデオ展開を見越してか、とにかくドアップの「迫力ある」映像、MTV 風の「クール」な編集で見るものを飽きさせないってことだ。
しかし、アクション演出には「緩急」っちゅうものが必要なのである。ヴィデオで見る分にはブラッカイマー風の演出はバッチグーかもしれないが、スクリーンだと「なんか一本調子なんだよねー」って感じ?
さて、この『60 セカンズ』。一応、売りはカーアクションだが、さすがはブラッカイマー、何がなんだかよく分からないアクションの連続で、退屈はせんが、かといっておもしろいワケでもない。部分的に CG も使われて、スゴイ画面なんだが、スゴイと思えないのがスゴイ。
主人公は、足を洗った伝説の車泥棒で、窮地に陥った弟を救うために 72 時間で指定の高級車 50 台を盗まなければならない。ブラッカイマー的には、単純明快さが命。話もどうでもいい感じですね。
「車泥棒」の倫理を明確にしていないのも気になる。一応「罪悪感なんてないよん、金持ちが乗り回してる高級車を盗んで、それが本当に必要とされているところに運んでるだけだ」と仲間の口から語られる。でも、盗難車を買うヤツもどれだけ必要としているかわからんじゃないか。主人公たちがよって立つところの倫理を明確にしてないから、「泥棒をカッコ良く描いちゃっていいのか?」と良識ある人なら文句をつけるところだ。
と、全面的にダメかというとそうでもなくて、ブラッカイマーは、登場した瞬間からピーンとキャラが立つ俳優を起用するのがうまい。今回も、ニコラス・ケイジの爆笑演技が楽しめるぞ。また、『17 歳のカルテ』でアカデミー賞を受賞し、『ボーン・コレクター』、『マイ・ハート、マイ・ラブ』(イオンシネマ久御山でひっそり公開された『マグノリア』のパチモン風映画)と稼ぎまくりのアンジョリーナ・ジョリーことジョン・ヴォイトの娘も出演、ホンットにいてもいなくてもいい役なのだが、画面のスミっこでコッソリ演技をしているのも見逃せない。『ロック、ストック & トゥー・スモーキング・バレルズ』で子連れの借金取り立て屋を演じていたヴィニー・ジョーンズも登場。アホらしいがなかなかいいぞ。
で、ブラッカイマーだが、現在、真珠湾攻撃を描く『パールハーバー』っちゅう映画を製作中だ。どうでもいいけどメチャクチャ楽しみですな。
BABA Original: 2000-Sep-10;
|