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Movie Review 2000・10月4日(WED.)

X-メン

 そう遠くない未来、特殊な能力を持つミュータントが大量に発生。危機感を強めた「人類」は、ミュータントを敵視、登録法を成立させ、管理下におこうとする。一方、ミュータントは、「人類」との共存か、対決かをめぐって争う、ってのが基本のお話。割と安めの CG を駆使して描く。

 アメリカでは有名らしいコミックの映画化で、馬鹿っぽいコスチュームに身を包んだ特殊能力者が活躍する。原作は 1960 年代、人種差別政策撤廃を求める公民権運動が盛んな頃に生まれたらしい。ストーリーの裏側には、マイノリティに対する差別と偏見を告発するメッセージが盛り込まれている。

『スタートレック』のピカード船長ことパトリック・スチュアートは、「プロフェッサー X」を名乗り、全米のミュータントを集めて教育をほどこす。高い知性をもてば、いわれなき差別を克服できるとの目論見だ。

 他方、『ゴッズ・アンド・モンスター』、『ゴールデン・ボーイ』のイアン・マッケランは、「マグニートー」と名乗り、支配層に対する敵意をつのらせ、暴力的な手段での社会転覆をたくらむ。この二人の路線の対立は、民族融和を唱えるマーティン・ルーサー・キングと、「黒人は黒人だけの国家をつくるべきだ、白人との共存は不可能だ。」とするマルコム X の対立を持ち込んだものだろう。

 最後の対決が自由の女神、かつての移民の上陸地点であったエリス島でおこなわれるのが興味深い。自由の女神には、「よその国で抑圧されている民は、みんなアメリカに来い!」と刻まれた碑文があるそうで、他民族の共存がアメリカ建国の精神なのだ。それをなりたたせるものは「寛容」であり、当然、共存を唱える「プロフェッサー X」=正義、対立をあおる「マグニートー」=悪、という図式である。

 原作の誕生から 30 数年をへて映画化するにあたり、作者はあらたな差別問題をからませている。恋人にチューをしたら、死なせかけちゃったというのが、最初に描かれるミュータントの特殊能力だ。ここでの「ミュータント」とは「エイズ」の隠喩だろう。「マグニートー」一派は非ミュータントに敵意をつのらせ、サミットで世界の指導者をすべてミュータント化する計画を立てる。エイズ・キャリアーがヤケになってエイズを伝染させまくろうとするのと同じですな。

 当然のごとく「プロフェッサー X」一派が勝利をおさめるが、「マグニートー」一派もなかなか魅力的に描かれており、ポリティカル・コレクトの押しつけとはなっていない。差別に抗する路線の対立は永遠に続く。続編をお楽しみに、ってところ。

 監督は『ユージュアル・サスペクツ』のブライアン・シンガー。陰鬱さを全編にただよわせる。アクション演出もキレがあってよろしい。パッと見はアホっぽいが、そんなに阿呆でもないのでオススメ。

BABA Original: 2000-Jan-04;

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