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Movie Review 2000・3月29日(WED.)

ナビィの恋

『秘密の花園』『学校の怪談 3 』などでもいいとこ見せた西田尚美主演。都会から沖縄の離島の故郷に里がえり。ジジイとババアが住む家に居着くが、どうもババアが年甲斐もなく色気づいてやがる。同じ船で島にやってきた白いスーツの紳士が、実は 60 年前、「生木を裂くように」別れさせられたババアの恋人だったのだ。「ナビィ」ってのはババアの名前ね。それに、同じ船でやってきたムラジュンと西田尚美のロマンス(?)がからんだり、からまなかったりして…、という話。

 映画全体に流れる雰囲気は、南の島で、酒と音楽と愛があればハッピーさ、ってなもんで、いやまあ、それはそうなんだろうが、これはさては「木屋町系」的価値観。脚本/監督の中江裕司は京都出身らしいし。なぜか島に居ついているアイルランド人がヴァイオリンでアイルランド民謡をかなでたり、オペラ歌手が熱唱したり、子どもの演技が妙に劇団ひまわり調のシラコいものだったり、ババアの 60 年前の悲恋が無声映画風に語られたり…と、ヘタすると痛目な演出が満載なのだが、実は傑作。

 何と言っても西田尚美最高! んがーと股を開いて寝てるとか、公民館(?)の余興で松田聖子の歌を唱うとか、並の女優さんでは激痛必至の演技を見事にこなす。全編に魅力炸裂。

 さらに、さらに素晴らしいのが、ババアが昔の恋人とそういうことになっても、たんたんと三弦を弾くジジイだ。演じる登川誠仁は沖縄民謡界の大御所らしいが、もうメチャクチャいいのである。『ブエナ・ヴィスタ・ソシアル・クラブ』といい勝負だぞ。ちょっと英語も混じってたりする沖縄言葉が、最高に気持ちいい。「ナビィはねぇ、昔はきれいだったさぁ。オッパイも大きかったねぇ。でもねぇ。小さいオッパイもいいもんだよぉ〜」…って何の話やねん! とツッコミを入れたくなるマジボケ炸裂。何を考えているかよくわからないのだが(何も考えてないかもしれない)、一言、二言が、いい。ババアにアンマ機を進呈するシーンは涙なしには見れません。

 撮影は高間賢治。この人は、奨学金をもらってアメリカで修行、日本に、「撮影監督が、照明も含めて画面のルック(見た目)全般を決定する」欧米流の撮影システムを持ち込もうと頑張ってる人。『マスターズ・オブ・ライト』(フィルムアート社)の共訳、『撮影監督って何だ?』(晶文社)の著書あり。で、これまで『高校教師』(映画の方)や、『ラジオの時間』などで、ん? 見慣れた日本映画とちょっと違うぞ? ってトコとを見せてたが、今回は沖縄の風景をとらえて最高の仕事。

 とにかく気分よく映画館を出ることが出来るので、オススメだ。

BABA Original: 2000-Mar-29;

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