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Book Review 2000・3月2日(THU.)

冷静と情熱のあいだ Rosso」
 江國香織
「冷静と情熱のあいだ Blu」
 辻 仁成

角川書店刊

 夕焼け色と空色のつややかな表紙の 2 冊は、いつも仲良く並べて置かれていて、きっとすでにたくさんの人が書店で目にしていることでしょう。江國香織さんが Rosso 、辻 仁成(ひとなり)さん Blu を担当し、ひとつの恋を男女別々の視点で描く共作スタイルが話題を呼んでいる恋愛小説。

 江國香織の書物はここ半年ほど好んで読んでいるのだけれど、辻 仁成は未体験…。なのでこの本を読むために、事前にいくつかの彼の作品にもトライしてみました。せっかくなら、共作というスタイルから生じる様々な制約の中、ふたりの作家の個性がどこまで生かされ、個々の能力を超えて一体何が新しく表現されるのかをちゃんと感じ取りたいと思いません?

 相手を思うほどに長くてゆるやかで悲しい時を経てしまうことになるアオイと順正の、“半分ずつ”の恋愛の軌跡を描く面白い仕立て。舞台となるフィレンツェとミラノ、東京という場所たちの、それぞれの役割も素晴らしい。まぁ、オビに書かれた“新しい百年に恋するすべての人に捧ぐ”“今世紀最後の最高の恋愛小説”などという大げさな惹句はさておいて…ね。

 さて、この 2 冊の本をいかに読むか、である。

 私は『月刊 カドカワ』に連載されていた当初の形式、すなわち Rosso → Blu → Rosso …と、往復書簡のように 1 章ずつ交互に読む方法を選んだ。ところが、今までの経験から、基本的に江國香織はバスタブで読み、辻 仁成はベッドで読むのがイチバン! と勝手に決めてしまっている私は、読み進むのに思いの外時間がかかって作戦失敗。しかも女だからか(あるいは自らも 2000 年 5 月に 30 歳になるもので贔屓しちゃったからか?)、やはりアオイの生き方の方が気になって、ついつい 2 章まとめて読んでしまうフライング行為もしばしばで…すっかりわやくちゃなことでした。

 っつうわけで、この方法は面白いけれどやっぱり落ち着かない。2 冊を別々に、しかし一気に読む、というのがベストではないかと思われます。上下刊ではないので、どっちを先に手に取るかは自由。ただし。諸事情により、最終章だけは Blu を後に読むべし!

 …これはぜひ、実行してみてくださいね。

maki Original: 2000-Mar-02;

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