橋の上の娘
パトリス・ルコント監督作、といえば『仕立屋の恋』が良い、と思う。しかし後の作品は、ボクにはなんだかパッとしない感じである。『髪結いの亭主』のフニャフニャダンスは良かったか。
ルコント監督『リディキュール』のパンフレットに書かれていたと思うのだが、フランスといえば「エスプリ」。「エスプリ」とは何か? それは他者をおとしめて笑いを取る、ということだそうだ。一方、イギリス人が得意とするのは、自らをおとしめる「ユーモア」。われわれ関西人にとってシックリ来るのは「ユーモア」であることは言うまでもない。
さて、『橋の上の娘』のパンフによると、「往年のフランス映画のようにシンプルなストーリーの中にエスプリの効いた台詞を散りばめ」ているそうで、わちゃあ、って感じなのだが、バネッサ・パラディ演じるのは、誰とでも寝ちゃう尻軽で、「的とは寝ない」ことを職業倫理としているナイフ投げ、ダニエル・オートイユにいつしか惹かれていく…ってな話で、ストーリーはどうってことなくて、セリフこそ命の映画。しかし、そのセリフがどうにもこうにも。
オープニングはバネッサ・パラディの長回しで、TV 番組かなんかに出演していて、インタビューされておるのだが、なんだかんだと自分に運がないことを述べておる。「何故か?」と問われてバネッサ答える。
「運がない理由なんて……。音感がない理由を説明できる?」
痛い。痛たたたた。痛いっちゅうねん! なぜだか色々悲しい出来事が起こって、理由が判然としないが故に「運がない」、と、言ってしまうのだから、「運がない」理由を聞く方も聞く方であるが、妙なツッコミをするんぢゃない!
オープニングのみならず、全編この調子の痛いセリフ満載。字幕翻訳者がどうしようもなくセンスがなかった、というケースも考えられるので、ひょっとしたら傑作かも知れないが、おらのような田舎者には理解不可能だべ。
最近は CG も進歩しているから、ナイフ投げも、カッコ良くワンカットで撮れそうなものだが、さすがエスプリなルコント監督は、そんな下品なことしませんな。と、いうことで、エスプリな人にはオススメだ。ユーモアな人には勧めません。
BABA Original: 2000-Jun-08;
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