ラブ オブ・ザ ゲーム
ジョン・カーペンターとならぶボンクラ映画チャンピオンのサム・ライミが『シンプル・プラン』でいわゆる非ボンクラ映画監督に華麗に転身。なんだ、オーソドックスな映画も撮れるぢゃん! と認められたのか、ケヴィン・コスナー主演作品を撮るハメに。題名からは『メッセージ・イン・ア・ボトル』系のラヴラヴな物語を想像されるでしょうが、原題は“For Love Of The Game”。こういうセリフが劇中にあったが、字幕では「野球が好きだから」になっておりました。そう、ラヴロマンスの要素もあるが基本は野球礼讃、体育会系礼讃の映画なのである。
『ウォーターワールド』なんて映画に出ちゃったからか、眠いデート・ムーヴィーに多数出演しているからか、演技がワンパターンだからか、ケヴィン・コスナーを毛嫌いする方もおられましょうが、この映画、ケヴィン扮する大リーグの名投手が恋人に逃げられ、所属チームは身売り、トレードに出されるか引退かの岐路に立たされ、おまけに腕は痛むし…という、情けなーい最低のシチュエーションからスタートするので、ケヴィン嫌いの人もとりあえず溜飲を下げておこう。ケヴィンは先発投手で消化試合に臨む。「ひょっとしたらこれが最後のゲームか?」との決意をこめた試合だ。一球一球投げ込むたびに、これまでの選手生活のアレヤコレヤ、テンヤワンヤが走馬燈のように思い出される。なかなか泣かせる話でしょ? 上映時間は長めの 2 時間 18 分。ほぼ試合の経過をそのままたどる。こういう、まず、ドーンとケヴィンを不幸のどん底に突き落としておき、ヘヴィな試合に臨ませ、現在の時間と回想を交互に語っていくってのはオーソドックスというか、クラシックというか。良くできた脚本ですな。空港のスタンドバーでテレヴィに向かって「アホ! 審判どこ見とるんぢゃい! セーフやんけ!」と文句を垂れるおっさんとか、過去に珍プレーをしてしまった外野手とか、脇役の配置もいい。
とにかく、野球・体育会系礼讃。遠征に出かけるチームが背広姿で飛行場をズーンと闊歩するシーンは、野球嫌い+スポーツ興味ナシのボクですら「カッコいいぢゃん!」とうなりましたね。『ライト・スタッフ』に通じるものあり。
ケヴィンの逃げた彼女ってのが雑誌の編集者でヤッピーな非体育会系。演じるのは『ザ・エージェント』でもヤッピー女を演じたケリー・プレストン。体育会系とヤッピーの恋愛は可能か? 愛は趣味の違いを越えられるか? というテーマも展開される。ケヴィンというと過去にも野球選手に扮した『さよならゲーム』、『フィールド・オブ・ドリームス』、ゴルファーに扮した『ティン・カップ』など、体育会系俳優のナンバーワンであろう。そういうところが毛嫌いされる理由かもしれないな。この映画の場合はヤッピー女との対立を導入することにより、「体育会系」という特質に検証が加えられる。よってケヴィンの汗くさいところが苦手な方にもオススメできるものになっている。と言ってもエンディングが甘いので、所詮、ケヴィン・コスナー映画と言われてもしょうがないか。でもやっぱり国中を同時に感動させることができるのは、体育会系だけなんだなあ。ケヴィン最高!
脱ボンクラをめざしているとはいえ、さすがはサム・ライミで、ケヴィンが剛速球を投げる、スタジアムを大観衆で埋める、など CG が全開で使用され、かつての野球映画がなしえなかった臨場感を作り上げている。音響効果もビシュッとかズザザッとかやたら大層・劇画調であり、映画不リークを喜ばせるツボは心得ている。ボブ・シーガーの“Against The Wind”などポップスの挿入の雰囲気は、スコセッシをホウフツとさせ、S ・ライミは「名匠」に化けつつある、と感じた。『ブギー・ナイツ』のヤク中ポルノ男優ジョン・C ・ライリーがキャッチャーであったり、球団オーナーの変な顔の甥とか、脇のキャスティングもこだわっている感じ。
タイトルデザインは『博士の異常な愛情』、『ブリット』、『ストップ・メイキング・センス』などのパブロ・フェローが担当。これも見どころですね。
BABA Original: 2000-Feb-03;
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