バトル・ロワイアル
中坊 42 人が殺し合い! 勝者は 1 名限定、タイムリミットは 3 日間。もし 3 日たっても勝者が決定しなければ全員の首輪が爆発、否が応でも中坊たちは殺し合わざるを得ない。この弱肉強食のゲームは、資本主義社会の縮図ってことで、中坊にとっては、今後社会に出たときに役立つ教訓に満ちた映画なのだが、悲しいかな R-15 指定。しかし、小・中学生こそ見るべき映画、中坊の諸君はまず、映倫の入場規制のナンセンスさを思い知りましょう。
自分が 15 歳だった頃の気分を忘れている大人は見なくていい、って感じ。オッサンはタケシに感情移入してしまうから、「大人をなめるガキどもは勝手に殺し合いしてろ!」ってところでしょうか。
エンターテインメントとは、道徳的・倫理的であるほどおもしろい。この映画も道徳的であるがゆえに傑作エンターテンメントなのだ。ギリギリの殺し合いの中で、中坊たちは安穏とした日常では恥ずかしくってとてもできない行動を取っていく。愛だの友情だのヒューマニズムだのが称揚されているのだ。回想シーンで、川田(山本太郎好演)の彼女が取った行動の美しさを見よ。泣ける!
誰が、どういう順序でどういう死に方をしていくか? 中坊はこの映画から勝者・生き残りとなる術を学ぶべきだ。「殺し合いなんてしたくないよ」なんてふにゃけたヤツは直ちに死ね。友だちごっこをしているヤツも死ね。戦いに積極的に身を投じ、他者を破壊することに愉悦を感じる者が圧倒的な強さを持つのだ。安藤政信、芝咲コウらを見習いたまえ。しかし、他者との共闘関係を築けないのが弱点ではあるな。また、ゲームのシステムそのものを破壊しようとするのもいいけれど、ゲーム本来の目的から逸脱しているため、うっかり出会い頭に殺されちゃうかも知れないので考え物だね。では、勝者に必要な資質とは何か? 「関西弁をしゃべる人間を信用せよ」。映画の教訓はこれに尽きるだろう。中坊諸君、わかりましたか?
話変わって、原作者・高見広春はどうもスティーブン・キング好きらしく、原作にはキング的な、物語を語ることへの過剰な欲望に満ちている。一見、映画的なお話なれど、実はこういうのこそ映画化がむずかしい、というのはスティーブン・キングの小説の映画化は数あれど、成功したのは中編を元にする『スタンド・バイ・ミー』『ショーシャンクの空に』、長編なら『ミザリー』『シャイニング』くらい、という事実が物語っている。
『バトル・ロワイアル』のおもしろさを原作と比べてどうこう言うのは、小説『シャイニング』と映画『シャイニング』のどちらがおもしろいか? と問うのと同じようなものではないかいな。
映画『シャイニング』がキューブリックのものであるように、映画『バトル・ロワイアル』は深作欣二のものなのである。そして深作欣二の映画はすべて傑作。よって『バトル・ロワイアル』は傑作。完。
とにかく、これを見なければ話にならん、というくらいオススメ。ではあるが、原作を忠実に映画化した 5 時間くらいのヴァージョンも見たかったりして。
BABA Original: 2000-Dec-24;
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