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Movie Review 2000・8月31日(THU.)

ヴァージン・スーサイズ

 監督のソフィア・コッポラは、ご存じフランシス・コッポラの娘で「パパァ、映画に出たいの〜」と言ったかどうかは知らないけれど『ゴッドファーザー PART III 』に役者として出演してみたら、いくら娘といっても酷すぎるとボロカスに叩かれたもので、その後は写真をやったり、洋服のブランドを立ち上げて代官山にショップを出したり、と大活躍らしい。

 写真家が映画を監督した、ってのはウィリアム・クラインという成功例があるが、ファッション・デザイナーが撮ったってぇと高田賢三『夢・夢のあと』(ちなみに音楽はジャーニーだったりして。ははは。)。こりゃ期待薄なんだが、この『バージン・スーサイズ』、フランシス・コッポラがプロデュースしており、人脈を生かしたのかジェームス・ウッズ、キャサリン・ターナー、ダニー・デヴィートが出演してたりして、一応ちゃんとした映画になっているのでご安心を。

 物語はボンクラそうな少年の回想で進められる。家の向かいには美人 5 姉妹が住んでいて、仲間と一緒にのぞき見したりして。

 末の妹が自殺を図る。お医者が言う。「キミは 13 歳でまだまだ人生の本当の楽しいことや苦しいことを知らないはずなのに。なんで自殺しようとするのか、先生には皆目わからんョ」。娘が答える。「だって先生は 13 歳の女の子じゃないでしょ。わかるわけないじゃん」。完。

 なんか、冒頭 5 分で結論が出てしまった感じだが、自殺の原因なんて他人にも、ひょっとしたら本人にもわからないわけで(きっと)、その原因を究明しようなどというのは意味なきこと。その後、家族を巡ってアレコレ小さな事件が起こり、結局残された 4 人の娘も集団自殺を遂げる。ソフィア・コッポラにとっては自殺の原因はどうでもよくて、主に 70 年代、都市の近郊に住む 4 人の姉妹のダラダラした生活感を描きたかった、ってところか。衣装、小道具、撮影など、なかなか美しくってよろしい。ダラダラしてますが。

 思い出すのはピーター・ウィアー監督の『ピクニック at ハンギング・ロック』。あれも寄宿舎の少女のダラダラした日常を描き、突然の失踪の原因は謎のまま放り出される。まず謎を提示し、それに対して理性の光で解答を与えていく、というやり方があるのだけれど、謎は謎のままボンと放り出しておく、その方が魅力的なのだ、という映画もある。デビッド・リンチの『ロスト・ハイウェイ』とか。

 で、『バージン・スーサイズ』は、5 人の姉妹が自殺する、てな話だけ聞くになかなかに魅力的なんだが、映画になった場合、謎がいかほどの魅力を持ちえているかは疑問で、おどろおどろしくする必要はないんだけど、なんちゅうか、理性の光が及ばない暗闇がポッカリ広がっている感が欲しいなぁ、というのは凡人の勝手な感想かしら。

 自殺という「事件」を異常なものとして扱ってもらわないと、居心地が悪いんだよね。「自殺」を、別に取り立てて不思議ではない日常のありふれた点景として描いているという点は、監督が意図しているかどうかは別にして、この映画のおもしろい点なり。京都みなみ会館での上映は終わっちゃったけど、オススメ。って、これでは相変わらずほめてるのかけなしてるのかわからんな。割とほめてます。

BABA Original: 2000-Aug-31;

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