ホワイトアウト
織田裕二主演、和製『ダイ・ハード』の趣を持つサスペンス・アクション大作。テロリスト集団が、雪に閉ざされたダムを占拠、50 億円支払わねばダムを爆破するとの脅迫を行う。偶然人質になることを逃れた電力会社勤務/趣味は登山の織田君は、たった一人でテロリスト集団にたち向かう。物語の構造は『ダイ・ハード』と同じ。
テロリストの目的が実は…、とか、外部に温厚な警察官(中村嘉葎雄好演)がいて織田君と連絡を取ったり…、とかディテイルも似ている。別にマネをするのが良くないと言っているではない。マネしてもいいけど、結局、『ダイ・ハード』ってのは伏線張りまくりの良くできた映画だったなあ、と思わせるようではイカンのだ。もっと脚本で踏ん張っていただきたい。
以下ネタバレで恐縮。
松嶋菜々子は「フィアンセを殺された」と思いこんで織田君を呪い続けており、ラストで、なーんだ織田君っていいヤツじゃん、ゴメンね今まで誤解しておりましたとホロホロ泣くという趣向なのだが、そこに至るまでのプロセスがぞんざいなのだ。例えば、織田君を呪う余り、つい織田君を窮地に陥れてしまって「あんなヤツ死んじゃえばいいのよ」とのたまわせておけば、ラストはもっと盛り上がるんじゃないか?
また、あの雪崩は、事前に「おい、この辺は少しの振動でも雪崩が起こるところなんだ! 気をつけろ!」というようなシチュエーションが要るぞ、とか。余計なお世話ですけど。
画面は『八甲田山』以来(?)のモーレツな雪中撮影が敢行され、織田君もさぞ寒かろうなあ、と、なかなか迫力があるのだが、スリルとサスペンスとアクション演出もダメだ。まずもって、そもそも日本においてリアリティをなかなか持ち得ない「テロリスト」。日本のテロリストといえば、全共闘世代か、カルト宗教、ということになるが、こんな、そこらへんのクラブの店員のような「眉毛の手入れもちゃんとしてるよん」ってな洒落者テロリストがいるのか。
しかも、射撃の下手さ加減はどうだ。訓練してないのか? テロリストが撃つマシンガンは決して織田君にあたらぬのに、素人の織田君が半ばパニックに陥りつつ乱射すればたちまちテロリストに命中するのはどうしたことか。笑うところなのか? …と、文句を垂れたら、ヤマネ氏が言うには、「あの人たちは、佐藤浩市以外はみんな素人で、初テロなんですよ。射撃訓練はしてません。使い方を教えてもらったばかりなんです。松嶋菜々子に得意げに『銃には安全装置があるんだぜ』とか言うでしょ。アレは覚えたてで、人に言いたくて仕方なかったんです。」とのこと。なるほど! うーむ。
と、ゴチャゴチャ細かくブー垂れるのも、実はこういうサスペンス・アクションというジャンルが好きだからなんです。ぜひ、超大ヒットして、日本でも続々とこの手のアクションが作られるようになれば良いなあ、って感じ? なので、みんなとにかく見に行くこと! 見たくなかったら、チケットを買うだけでもいいぞ。織田君は、「織田裕二」という役柄を演じだしており、大スターの道を歩みだした雰囲気がある。「渥美清=寅さん」、「勝新=座頭市」同様、織田裕二=「都知事と同じ青島」の線で、無理にレパートリーを広げようとせず、この調子で年一本くらいアクション・サスペンスでがんばっていただきたい。超絶スーパーオススメ! ということにしておく。
BABA Original: 2000-Aug-24;
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