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Movie Review 2000・4月14日(FRI.)

スリー・キングス

 湾岸戦争終結直後のイラク。なんか、せっかく戦争に来たのにあんまり盛り上がらなかったなあ、ということで、米軍兵士若干名が隊を抜け出し、クウェートから強奪された金塊をいただきに出かけちゃう、という 1970 年公開ブライアン・G ・ハットン監督、クリント・イーストウッド主演の『戦略大作戦』をホウフツとさせる痛快アナーキー娯楽アクション巨編的筋立てだが、そういうモノを予想すると、少々ガックリくる。

 ひとつには流行りの MTV 的映像がダメだ。脚本・監督のデビッド・O ・ラッセルはどうだか知らないが、どうにも最近 MTV 出身の映画監督が多い。この作品にも MTV の傑作をいくつか作った後に『ビーイング・ジョン・マルコビッチ』で映画監督デビューしたスパイク・ジョーンズが出演している。それはどうでもよいのだが、過剰にザラザラした画質や、突如として挿入される内蔵に弾丸が撃ち込まれるカットなど、映像のお遊びに満ちている。『広告批評』の 5 月号で、『傑作 MTV 100 選』という特集をやっておるが、ここ 10 年くらいの近作は全然見てないので、ボクの斬新映像体験は 80 年代で止まっているのだ。MTV 的映像についていけないのだ。MTV を旺盛に見ているヤングの方々には、この映画の MTV 的演出は、なんら鑑賞の妨げになるものではなかろう。MTV 的な映像を受け入れられれば、楽しく見ることも可能。

 また、第二次大戦から四半世紀を経て制作された『戦略大作戦』は、少々戦争を不真面目に描いてもあんまり文句が出なかっただろうが、湾岸戦争を題材にするというのは生々しすぎる。色々気をつかわねばならず、戦争を笑い飛ばすアナーキーさが中途半端なのだ。やはり、ここは 1970 年代アメリカン・ニューシネマ的手法にのっとり、前半は愉快痛快に楽しませといて、後半仲間が死んだりして、ガガーンと「アメリカニズムの終演」的な悲惨なところに話を転がす、というがよかろう。残念ながら、どうもタッチが一本調子(MTV 的演出にありがち)で、どうにもこうにも前半の痛快さが足りない。

 また、アメリカがイラク内に反乱軍を組織したが、停戦後それを見捨てたことを告発する内容になっているが、これは意見が分かれるところであろう。そもそもの反乱軍を養成したという行為については目をつぶって、反乱軍の残党が見殺しにされるに忍びない、よって助ける、という米軍兵士たちはアホ過ぎないか? またはあまりに脳天気というか。まあ、アメリカではイラクというのはナチス・ドイツにも匹敵する悪の帝国ということになっているらしいので、こういうのもオッケーなのだろうが、平和ボケしている日本の観客たるボクには、なんか変じゃないかなー? ってことなるだ。ジョージ・ブッシュの湾岸政策を正当化する内容になっているのも気にくわない。

 と、全体としてみれば不満タラタラなのだが、『アウト・オブ・サイト』のジョージ・クルーニーがキビキビ動いて男気を発揮し、『ブギーナイツ』のマーク・ウォルドバーグも演技の幅が狭いところを見せる。ヴィトンのバッグやベンツ、携帯電話の使い方など、湾岸戦争のアホさをかもしだしているので、いちばん新しい戦争映画、として見れば楽しめるのでオススメ。

BABA Original: 2000-Apr-14;

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