1 ソウルサバイバーズとは何か
「ソウルサバイバーズ」とは、クラタニシゲキ & イチモトカツヒロ両名によって主催され、ブーツィーズレコード店主ヒラノ氏の秘かなるサポートを受けて行われているクラブイベントである。
プレイされる音楽は、主にノーザンソウルとモダンソウル。現在のところ、京都では唯一のノーザンソウル系のイベントとなっている。
2 そもそもノーザンソウルとは何か
ノーザンソウルというのは、なかなかややこしい言葉である。何故なら、アメリカとイギリスでは指している概念が違うからだ。
アメリカでいうところの「ノーザンソウル」とは、正にアメリカ北部のソウル、デトロイトやシカゴの 1963 年から 60 年代後半にかけてのソウルミュージックを指す。そもそもソウルミュージックはこの時に産まれたのであり、ノーザンソウルはソウルミュージックの始源に位置するものなのだ。ちなみにノーザンソウル以前の黒人音楽を「アーリーソウル」という。
ところでイギリスの場合だが、簡単に言えば「ノーザンソウルシーンで愛されている音楽」のことを、ノーザンソウルという。これだけでは何のことやら分からないが、まず確認しておかなければならないのは、真にノーザンソウルシーンと呼べるものを持っているのはイギリスだけだ、という事だ。
アメリカにおいて、ノーザンソウルとは単に 60 年代後半に流行った音楽スタイルのことであり、時とともに消化・忘却されるものである。が、イギリスの場合は違う。60 年代。イギリスの北部に、この世に産まれた「ソウルミュージック」というものに心底衝撃を受け、命を賭けてそれを愛しぬく人達が出てきた。
彼等は、「ソウルミュージック」で熱く激しく踊ることに、人生の全てを捧げた。70 年代に入り、アメリカでいうところのノーザンソウルが衰退し、ファンクやニューソウルが市場を席巻するようになると、彼等は「すわソウルが死んだ!」とばかりにノーザンソウルに固執しはじめ、アメリカにまで出かけていって、田舎のレコード店を虱潰しに、それこそ時にはレコード店ごと買い取ったりして、「ノーザンソウル」を集め始めた。
同時にダンスフロアーの方も加熱し始め、見えないくらい早くステップを踏む、10 回転近くスピン(ターン)する、今で言うブレイクダンスのようなアクロバティックな技をする、飛ぶ、跳ねる、絶叫する、といった具合になってきた。
このように 70 年代を通して、世界で数枚しかないレアなソウルのレコードで、激しく、あまりに激しく踊る、一晩中踊り続ける「ノーザンソウルシーン」というのが形成されたのであった。そして、繰り返しになるが、このノーザンソウルシーンで愛された音楽を、イギリスではノーザンソウルと呼ぶのだ。もちろん、アメリカでいうところのノーザンソウルと、曲としてはかなりの部分がダブっている。が、やはり概念としては別ものなのだ。
「ソウルサバイバーズ」は、もちろんイギリスのノーザンソウルシーンの精神を受け継いでいるイベントだ。